<大河原邦男>巨匠に聞く「ガンダムSEED」メカデザイン “職人”としての姿勢
大河原さんは、「科学忍者隊ガッチャマン」が始まった1972年にタツノコプロに入社した。当時の経験から「線を入れるのが怖い」と感じるようになったという。メカデザインの線が増えれば、アニメーターの手間も増える。大河原さんは、アニメで動かすことを前提としたデザインを考えている。
「タツノコに新入社員として入り、3カ月でメカを始めたのですが、線を入れることが怖くなってしまったところがあります。その頃は、メカデザインではなく、メカ設定といっていました。芝居で必要なら、ボルト一本から形を指定していく。監督は鳥海永行で、社長は劇画的な画(え)を描く吉田竜夫でした。サンライズ、当時の創映社は『ゼロテスター』をやっていて、『ガッチャマン』があまりにもリアリティーがあるので、創映社が焦ったらしいんですよ。我々の仲間は20代でしたし、天野喜孝は19歳でした。そういう連中がワイワイとチャレンジしていた。私はアニメのことは知らなくて、わけが分かっていなかったけど、やりたいことがどんどんできました。そういう時代でした」
大河原さんが「ガンダム」シリーズのMS(モビルスーツ)を含めたメカをデザインする際に重視しているのがシルエットだ。竜の子プロダクション(現・タツノコプロ)の入社前に、オンワード樫山で背広のデザインをしていた経験を生かしているという。
「衣装、コスチュームもシルエットです。ザクも背広ですから。オンワードで背広をたくさん書かされましてね。仏像や民族衣装などを頭に思い浮かべると、どんどん作れるんですよね。そんなに頑張って作っているわけではないですよ」
◇ゲルググ、ギャンのデザイン 福田監督への信頼
「SEED」シリーズも線を入れすぎないデザインで仕上げようとした。シルエットで特徴的なのは“羽”のあるMSが多いことだ。羽があると、全体のバランスをとるのが難しそうだが……。
「昔は、模型にする時、立てないからダメだと言われたのですが、胸から放射線状の武器を付けたり、そういうシルエットが子供たちに喜ばれるけど、脚はしっかりと地面に立つ。ハイヒールはダメだと言われていましたが、今は関係ないですよね。ただ、身に付いてしまっているものがあるんです」