マーケティングの力でキャリアを切り拓く。井上大輔さんに聞く「幸せな仕事の見つけ方」
Kanoモデルの「3つの品質要素」で自己分析
次に井上さんが解説してくれたのは、日本ではあまり知られていない「Kanoモデル」というフレームワークを応用し、自分の個性やスキルの磨き方を探る方法。 「Kanoモデル」は工学研究者の狩野紀昭氏が生み出した考え方で、マーケティングの世界でも顧客視点を深堀りするために取り入れられているとのこと。 商品やサービスの「品質」を決める特徴を考えるときに、この「Kanoモデル」がとても有効だといいます。 「Kanoモデル」のエッセンスとしては、以下の3つの要素があります。 一元的品質要素:あれば評価が上がり、なければ評価が下がる 魅力的品質要素:あれば評価が上がるが、なくても評価が下がらない 当たり前品質要素:あっても評価は上がらないが、なければ評価が下がる 車で言えば、燃費の良さは「一元的品質要素」。シトロエンのゼニスウィンドウのような解放感を演出する特殊な機能は「魅力的品質要素」。そして、UVカットガラスやドリンクホルダーは「当たり前品質要素」に当たると考えられます。 ざっくり「品質」と言ってしまうのではなく、その品質がどれに当たるのかを意識してみてください。 これは自分のスキルや特徴についても同じ。3つの要素に当てはめて見てみると、どの要素を強化すべきか、ほかと違う点は何かが見えてきます。 たとえば、苦手意識から必死の努力で英語力をネイティブ並に高めたとします。しかし、グローバル企業ではそれでようやく「当たり前」。だとしたら、英語の勉強はほどほどに、ほかの独自の強みを磨いた方が良いかもしれません。 また、「努力して身につけることと、それをアピールすることは別」と井上さん。グローバル企業において「当たり前品質要素」の英語力は、身につける必要はあっても、アピールできるものではありません。
コミュニケーションの落とし穴「誤解のメカニズム」
マーケティングにおいても、個人のキャリア形成においても重要なのはコミュニケーション。 しかし井上さんは、「コミュニケーションには必ず誤解が生じる」と断言。その要因として以下の2点を挙げました。 選択的注意:受け手が情報を選んで受け取る 選択的歪曲:受け手が情報を自分に都合よく解釈する 「確実に自分が意図した内容で伝わることはありません。誤解が生じる、曲折して伝わることを予測したうえでメッセージを調整する必要がある」と井上さん。 さらに、「ノイズ」の存在も忘れてはいけません。「ノイズ」とは、自分のメッセージに影響を与える可能性がある外部の要素のこと。マーケティングにおいては、インフルエンサーの発言や、関連するニュース、口コミなどがそれに当たります。 TPOを踏まえたコミュニケーションを、と昔からよく言われるのは、時・場所・場面で当事者を取り巻くノイズが変わるからです。 「ノイズ」の観察と分析は、お客さまや上司との会話において、時・場所・場面を踏まえ、自分のメッセージがどのように受け取られるかを想像することでもあると、井上さんは語ります。 普段のコミュニケーションでも、ちょっとした誤解が生じることはよくあります。そんなときに、上記の2つの要因やノイズの観点から、なぜそうした誤解が起きたのかを分析してみてください。今後のキャリア形成に生かせる気づきが得られるかもしれません。