【解説】「USスチール」買収巡る訴訟の行方 日本製鉄側のメリットとバイデン大統領の狙いは?
日テレNEWS NNN
「日本製鉄」がアメリカの鉄鋼大手「USスチール」を買収する計画について、バイデン大統領が阻止する命令を出し、日本製鉄が無効を求める訴訟を起こしました。経済部・片山桂子記者と国際部・山崎大輔ワシントン支局長に話を聞きました。 ◇ ──日本製鉄は会見で「諦める理由も必要もない」と強調しました。そこまでする日本製鉄とUSスチールのメリットは、どこにあるのでしょうか?
経済部 片山桂子記者 「この買収計画は日本製鉄、USスチール双方に狙いやメリットがあります。日本製鉄側からみると、アメリカは鉄鋼製品の先進国最大級の市場規模で、今後も安定的な成長が見込まれています。日本国内での需要の拡大が期待できない中、USスチール買収でアメリカ市場を取り込みたい狙いがあるんです」 「一方のUSスチールは120年以上の歴史をもっている“名門”企業で、かつては世界最大の鉄鋼会社だったのですが、設備の老朽化や中国など海外メーカーとの価格競争などで業績は低迷してしまっています。日本製鉄は買収後も雇用の削減や設備の閉鎖、生産の海外移転は行わないと約束しているので、USスチールにとってとても良い条件といえます」 「2023年の世界の鉄鋼メーカーの生産量のランキングは、上位10社のうち6社を中国のメーカーが占めていて、世界4位の日本製鉄と世界24位のUSスチールが一つになると、単純計算で世界3位にジャンプアップできるんです」 ──この訴訟で、日本製鉄が勝てる見込みはあるのでしょうか? 経済部 片山桂子記者 「アメリカの制度上、大統領による安全保障上の判断の根拠は一切、非公開とされているので、裁判を戦うための証拠をどう示すかが焦点となります。でも、橋本会長は『裁判で、大統領の判断が、憲法あるいは法令に明確に違反したものであるということが示されていくと確信している』と話していて、『勝訴のチャンスはある』と強調しています。もし裁判に負けた場合、今後の日本企業のアメリカ市場への投資判断などに大きく影響を及ぼす懸念もあります」