新年祝賀会、高水準の賃上げ目指す声相次ぐ 今後の景気はトランプ新政権が不安材料に
経済3団体が7日共催した新年祝賀会に出席した企業経営者からは、賃上げと物価上昇の好循環実現を目指し、2025年春季労使交渉(春闘)に向けて賃上げに前向きな発言が相次いだ。今年は日経平均株価が史上最高値の「4万5千円」に到達するとの予測も出るなど、景気の先行きに期待が強まる一方、米国で20日に発足するトランプ新政権の動向を不安材料に挙げる声も目立った。 ■「報いるだけの賃上げを」 「賃上げは社員のためだけでなく、日本の企業に背中で示していくことだ」 キリンホールディングス(HD)の磯崎功典会長は、本格的な経済回復に必須となる賃上げの意義を訴えた。今年の春闘に向け、引き上げ幅は明かさなかったものの、同社が今年4月にビールなどの値上げを予定していることを挙げ、「それに報いるだけの賃上げをする」と説明した。 厚生労働省の調査で、昨年の賃上げ率は過去最高の4・1%に到達。「今年も4%前後の水準を目指す」(日本マクドナルドHDの日色保社長)などの声が聞こえたほか、昨年の基本給を一律に引き上げるベースアップ(ベア)が3・5%だった三井住友銀行の福留朗裕頭取は「昨年以上(の水準)になればいいと思っている」と説明した。 ■世界情勢読み切れず 一方、日本航空の鳥取三津子社長は継続的な賃上げの必要性を示しつつ、「トップライン(売上高)と生産性の向上がセットでないと(実現は)難しい」とくぎを刺した。 物価高による家計の圧迫は続くが、物価変動を考慮した1人当たりの実質賃金は改善の兆しがあり、「25年の景気は非常にいいと思う」(福留氏)、「緩やかに回復してよくなってきている実感がある」(三菱商事の中西勝也社長)と、今後に期待を寄せる声が目立った。中西氏は、海外投資を進めるのに有利な円高への転換を望む一方で、先行きの予測がつかない状況を最も懸念し、「安定的に為替が推移することが一番大事」と述べた。 昨年に史上最高値の4万2千円台に達した日経平均株価について、大和証券グループ本社の荻野明彦社長は「今年の高値は4万5千円」と最高値更新を予測。各企業が資本効率を意識した経営にかじを切り、不採算事業の売却や成長分野への投資などを積極的に進めていることを理由に挙げた。
ただ、関税の引き上げをはじめとした保護主義的な政策を掲げるトランプ次期大統領の就任を控え、「世界情勢は読み切れないところがある」(ANAHDの芝田浩二社長)、「リスクを感じている」(荻野氏)と不確定要素を指摘。三井不動産の植田俊社長は「自国第一主義や大国のエゴが前面に出てくる時代に変わってきているので注視が必要」と警戒した。