<リオ五輪>男子体操団体3大会ぶり金メダルの勝因とは?
「体操の金メダルと言えばアテネの冨田(洋之)さんの栄光への架け橋だ!の映像が繰り返し再現される。それを塗り替えたい」 大会前そう語っていたエース内村航平にとっては、ミスの連鎖で予選4位に終わる波乱の幕開けだった。 決勝は予選の得点は持ち越されないが、各種目3人だけが演技をするひとりのミスも許されない戦いである。 予選1位なら、ゆかから始まり鉄棒で終わる正規ローテーションで決勝を戦えた。最後の鉄棒で金メダルを決定づける演技を披露して、リオのマットへ舞い降りてくることもできたのだが、その夢が消えた上、体力を必要とするゆかが最後の演技となってしまった。 ところが、終わってみれば アテネ五輪以来3大会ぶりとなる圧勝の金メダルである。 いったい何が勝利を呼び込んだのだろうか。 アテネの冨田をはじめ3人の金メダリストを育てた指導者、城間晃氏(シロマスポーツクラブ)は、1種目めのあん馬の加藤凌平の演技を勝因のひとつに挙げた。 トップ内村の後、続く山室光史に落下のミスが出た。その後で演技をしたのが加藤である。城間氏は「加藤は想像を絶する重圧を跳ねのけて演技を通し切った」と話す。 「加藤のあん馬は本来、もっと旋回にスピードがあって大きいんです。それが、重圧でこぢんまりしていた。だが加藤はその重圧に耐えてミスなく演技を終えた。これが大きかった」と言う。 序盤の崩壊を回避した日本は、続くつり輪で山室が今度は堅調な演技を見せ、日本は5位で逆転の下地をつくった。 だが、その後の戦いは平坦なものではなかった。3種目めの跳馬で白井健三、4種目めの平行棒では田中佑典が気迫の演技で高得点をマークするのだが、日本はまだ2位のままだった。 金メダル争いのライバルとなったロシアが1位にいたのである。 城間氏はこの場面を「採点の明暗」と語った。 体操の採点は近年、技の難度を重視する傾向から、美しさを重視する傾向へとふたたび変わってきた。本来、日本にとっては有利な状況だが、現場の採点にはまだばらつきがあった。 「ロシア選手の平行棒は、膝の乱れ、曲がりが目につきましたが、さほど減点されていないと感じました」と城間氏は言う。