<リオ五輪>男子体操団体3大会ぶり金メダルの勝因とは?
その一方で、5種目めの鉄棒では「田中選手のわずかな角度の乱れが厳しく減点されていた」と話す。鉄棒を終えて、日本はロシアを逆転するのだが、その差はわずかに0.208点。美しい体操にこだわってアテネ以来のオリンピック団体金を目指してきた日本は、美しい体操の世界基準の曖昧さに苦しめられる展開となったとも言えた。 だが、その曖昧さに苛立たず、日本は最後まで集中し続けた。 最後のゆかは、日本の得意種目ではあるが、体力を必要とする種目である。城間氏はその厳しさを「他の種目は、着地は最後の1回だけですが、ゆかは何度も着地がある」と語る。 とくに6種目すべてに登場した内村の疲れは並大抵ではないはずだった。 「でも、そこで日本は集中力を切らさなかった。前年の世界選手権のチャンピオン国として絶対に勝つという気持ち、逆に言えば勝たなければならないという重圧を跳ねのける強い気持ちでしょうね」(城間氏)。 王者の誇りと意地が金を呼び込んだ。 ゆかには鉄棒のように、華麗に舞い降りてくるフィニッシュシーンはない。ゆかの最後の演技者として登場した内村は、最後の3回ひねりの着地まで丁寧にまとめて淡々と演技を終えた。 それは、内村が夢想した鮮やかな結末ではなかったが、静かに歴史が塗り替わった場面だった。 まだロシアの演技が残されていたが、“ゆかのエース”として高難度の技を連続成功させた白井が、高得点をたたき出したこともあって、日本の優位は、もう揺るがなかったのである。 アテネでは考えられなかった結末だった。最終的に2位ロシアとは2.641もの大差がついた。 日本は王者として勝利を期待されたオリンピックでその期待通りに金メダルを獲った。勝利を期待される重圧のなかで勝ったこの経験は、4年後の東京への得がたい財産となった。