DE&I 後退がもたらす長期的リスクと消費者・従業員への影響
記事のポイント モルソンクアーズやロウズなどの大手企業がDE&Iから後退しており、短期的な収益を優先しているが、これは長期的なブランド損傷につながる可能性がある。 消費者の多くは、包摂性に重きを置くブランドを支持しており、DE&Iの撤退は消費者離れを引き起こし、売上にも悪影響をおよぼす。 DE&Iの取り組みを後退させることは、優秀な人材の確保や従業員のモチベーションにも悪影響をおよぼし、企業の競争力を損なう可能性がある。 オートバイメーカーのハーレーダビッドソン(Harley Davidson)、ホームセンターチェーンのロウズ(Lowe’s)、農機ブランドのジョンディア(John Deere)、そして最近では飲料メーカーのモルソンクアーズ(Molson Coors)などの大手ブランドが、DE&I(多様性、公平性、包摂性)の取り組みを後退させ続けている。 業界アナリストによると、一般的にいえばこのような動きは近視眼的であり、成長には包摂性が必要なため、長期的にはブランドを傷つける可能性があるという。 これらの企業は多様性のための割り当て、必要なトレーニング、DE&I担当役員を廃止し、LGBTQ権利擁護団体のヒューマンライツキャンペーン(Human Rights Campaign)のような組織との関係を断っている。 この変化は、「ウォーク(目覚めた)」マーケティング活動に対する不買運動や、右翼アクティビスト投資家のロビー・スターバック氏からの圧力を受けてはじまった。 業界アナリストによると、DE&Iからの撤退を求める企業への圧力は消費者支出と利益の軟化のなかで生じているため、企業が収支の問題を口実にして態度を180度変えることも容易になってきており、こうした動きは最近になってDE&Iの取り組みに足を踏み入れはじめたブランドでよく見られるという。 「選挙の年は、多くの信念、価値観、政策が議論される年だ」と調査会社のフォレスター(Forrester)で主席アナリストを務めるオードリー・チーリード氏は述べた。「保守派活動家たちは、アファーマティブアクション(格差是正)にしてもリプロダクティブライツ(性と生殖に関する権利)にしても、国家レベルで議論されている特定の判決を利用し、これを企業との対話に持ち込んでいる」。 チーリード氏は次のように続けた。「この問題が悪化しつつある一方で、消費者支出も企業にとって大きな問題になってきている。その結果、価格感応性やレイオフなどのニュースが報じられるようになってきた。今は企業にとって『最終的な収益に影響を与えることを遂行する』という言い訳ができるうまい口実になっているが、実際のところは非常に近視眼的な考え方だ」。