DE&I 後退がもたらす長期的リスクと消費者・従業員への影響
成長と収益を揺るがすブランド戦略の転換
DE&Iの取り組みを後退させたブランドの一部は、収益にフォーカスする必要があるとしている。たとえば、ニュース専門放送局のCNBCが入手した内部メモのなかでモルソンクアーズの幹部は、同社は「来年から、幹部のインセンティブを業績に連動させるようにして、野心的なレプリゼンテーションの目標は含めないようにする」と述べている。 DE&Iへの投資を政治問題や保守的な価値観と結びつけるブランドもあるようだ。たとえば、AP通信によると、ロウズは7月に最高裁がアファーマティブアクションに関する判決を下したのを機に、リソースグループのサポート体制の見直しをはじめたとしている。CNNの報道によると、これまで確固としたDE&Iポリシーがなかったように思われるジョンディアは、オンラインで「社会的動機によるメッセージがないことを確認するため」トレーニング資料を監査すると述べ、この方向の戦略を強化することを明らかにした。 アナリストによると、成長の鍵は包摂性にあり、最近生じているDE&Iの取り組みの後退は長期的な成長を損なう可能性があるという。全米広告主協会(Association of National Advertisers:ANA)のインクルーシブ(包摂的)かつ多文化的なマーケティング同盟(Alliance for Inclusive and Multicultural Marketing:AIMM)による最近の調査によると、消費者の77%がすぐに購入をやめるか、自分の意見により近いほかのブランドを購入しようと考えるという。 9000人の消費者を対象とした同じ調査では、76%がそのブランドに戻らないか、そのブランドが「業務のやり方を変える」までは購入しないと答えている。 「業界では、包摂性は間違いなく成長に結びついており、包摂性なしに成長を最大化することはできないのだと理解してもらいたい」と、ANAのAIMMの共同創設者であるリゼット・アルスアガ氏は述べた。