英紙ガーディアン、レシピアプリを武器に読者のサポーター化を推進。 AI 活用など機能性を拡充
サブスクリプションの拡充
この手法はいわば誰もが通る「よく踏み固められた道」であり、ニューヨークタイムズ(The New York Times)なども使ってきた常套手段である。たとえば、ニューヨークタイムズは週額または月額の支払で同紙の全コンテンツにアクセスできる定額プランを提供している。2014年にはiPad向けに独自開発のクッキングアプリをリリースした。その後、Android版を追加するなど、広告収入からサブスクリプション収入へと軸足を移すための手段として着々と進化を遂げ、現在に至る。ちなみに利用料金は月額6ドル(約870円)だ。 現在までに、ニューヨークタイムズのクッキングアプリを利用する有料会員は過去4年間で3倍以上に増えているという。 対するガーディアンは月額払いまたは年額払いで3種類の定額プランを提供している。「サポート」(サポーター限定の週刊ニュースレター)、「オールアクセス」(電子版への無制限アクセス、広告の非表示、アプリへのアクセス)、および「デジタル/プリント」(電子版と活字版へのアクセス、プラス紙媒体のマガジンを宅配)の3種類だ。また、読者は各記事の読後に寄付することもできる。プレミアムアプリのフィーストは14日間のトライアル期間終了後、月額2.99ポンド(約560円)で利用できるという。
コンバージョン率は並外れて高い
イーマーケター(eMarketer)のシニアアナリストであるマックス・ウィレンス氏は、「ガーディアンは読者から寄付を募る戦略でなかなかの成功を収めている。基本的には、ジャーナリズムの重要性、あるいは公共の利益にとって決定的に重要な問題を報道することの必要性について、読者の感情に訴えることで寄付を集めてきた」と説明し、こう続ける。 「それはレシピの利用料として月額料金を請求するのとはまったく別の話だ。そうしたレシピの多くは、検索すればいくらでも見つかる無料のレシピとそれほど変わらないだろうし、読者はすでにニューヨークタイムズやコンデナスト(Condé Nast)、クックスイラストレイテッド(Cook’s Illustrated)などの有料アプリを使っているかもしれない」。 ウィン氏は具体的な数字は出さなかったが、ガーディアンのサポーターが100万人を優に超え、読者の70%が食に関するコンテンツを読んでいることを明かした。ガーディアンはこのアプリの利用が大きく進み、将来的に売上の「極めて重要な部分」を占めるようになると確信しているようだが、ややあいまいな概要説明からその自信の理由がある程度察せられる。 「トライアル期間はある種の試金石で、重要なのは無料体験の利用者のうち、何人が有料契約に移行するかということだ。これまでのところ、このコンバージョン率は並外れて高く、社内の予想を大きく上回っている」とウィン氏は語ったが、具体的な数字やパーセンテージは明かさなかった。 [原文:The Guardian moves closer to being a reader-supported business as it launches new cooking app] Krystal Scanlon(翻訳:英じゅんこ、編集:島田涼平)
編集部