2025年 日銀「次の利上げ」はいつ? 「市場との対話」の改善は
■乱高下した相場…日銀の情報発信の課題は
次の利上げ時期に加え、もうひとつ注目したいのは、25年の日銀の情報発信、いわゆる「市場との対話」だ。利上げに対する日銀の考え方を分かりやすく情報発信することによって、投資家らの予測可能性を高めることは、為替や株価の急激な変動を防ぎ、金融市場を安定させることにつながる。 しかし、24年は日銀の発信によって、金融市場が大きく動く局面が目立った。4月には、植田総裁の会見での発言をうけて円安が加速。一方、7月に利上げした際には、植田総裁の発言が、さらなる利上げにも前向きな印象を市場に与えた。 これに伴う円高の進行が、アメリカ経済の先行き不安が高まるタイミングと重なり、株価が大幅に下落。市場に「植田ショック」と称されることになった。市場関係者からも「日銀の市場との対話は、今年(24年)1年を通じて上手くいかなかった」との指摘が出ている。 木内元審議委員は、日銀と市場との対話の難しさについて、「日銀の場合、大規模金融緩和からの政策正常化を進めている最中という特殊性もあり、欧米の中央銀行のように、足元の経済データだけで政策は決まらない。為替の影響力が大きく、政治的な状況も一定程度影響してくるため、投資家にとっては判断しづらい」と解説する。
日銀の情報発信の改善については、植田総裁も24年12月の会見で言及。「ボードメンバー(金融政策決定会合に出席する9人の政策委員)による講演等について、時期を平準化するとか、スケジュールを早期公表するというようなことで、情報発信が途切れない、あるいは偏らないようにするような工夫は少しずつしてきている。記者会見でもどういう指標に注目しているかについても、これまで以上に少しずつ丁寧にお話しするように心掛けている」と説明した。 この点、門間元理事は、日銀の発信の頻度をさらに上げる必要があると指摘する。「(幹部の講演を)たまにしかやらないので、『やる・やらない』自体が意味を持つ。発信の手数を増やせば、1回の重みが軽くなるし、市場が間違って解釈した場合にも、次の講演やインタビューなどで修正がきく」というのだ。 門間氏は「利上げというのは、ただでさえ好まない人も多くいる。国民の理解、さらに政治の理解を得るという意味でも、丁寧なコミュニケーションが必要だ」と強調した。 24年12月の決定会合前、複数の日銀関係者から聞こえてきたのは「今の利上げ局面を大事にしたい」という声だ。25年、着実な金融政策運営と適切な情報発信で、日本経済を成長軌道に乗せる“下地”を作ることができるのか。日銀の動きには、引き続き大きな関心が寄せられる。