2025年 日銀「次の利上げ」はいつ? 「市場との対話」の改善は
■日銀の大方針は「利上げ急がず」 ペースの変動要因は為替か
では、専門家は25年の日銀の政策運営をどう見るのか。元理事の門間一夫氏(みずほリサーチ&テクノロジーズ)と元審議委員の木内登英氏(野村総合研究所)、2人の日銀OBに見通しを聞いた。
門間元理事は、植田総裁の会見に込められた意味合いについて「ここまでは経済・物価は日銀の見通し通り“オントラック”だったが、これからもオントラックであり続けるかについて、日銀は十分な自信がない、ということ」だと読み解く。その上で、日銀が「物価の上振れリスクが大きくない時に、早めに利上げする必要はない」と考え、より慎重に利上げ判断を行うとみる。 具体的な利上げの時期については、25年3月の決定会合になれば「トランプ政権の与える影響について、さすがにある程度は分かる可能性があり、利上げ(判断)の確度が高まるだろう。賃上げでも、(3月会合前に)今年(24年)並みの賃上げ率が出てくるようなら、日銀ももう少し(経済情勢の判断に)自信が出てくると思う」と分析した。ただ、トランプ政権下でのアメリカ経済減速のリスクが十分に小さくなるまで待つ場合、「3月の利上げも難しいかもしれない」とみる。 一方で門間氏は、利上げを待つリスクとして円安の進行を挙げ、「円安が進み、世論や政治から『円安は困る』という声が出る場合には、唯一、日銀が早く利上げする要因になる」と指摘した。
木内元審議委員も、24年12月の決定会合をうけて進んだ円安に注目する。「トランプ新政権と春闘に関する情報より、為替の動きで最終的に利上げタイミングが決まってくるのではないか」というのだ。 木内氏も、日銀の基本方針は「経済・物価の環境が大きく変化しない限りは、ゆっくり利上げしていくことだ」との見方だが、24年の2回の利上げタイミング(マイナス金利を解除した3月と7月)を振り返ると「円安の分、利上げ時期が早まった面があると思う」と指摘。次の利上げの時期について、「円安に背中をおされて利上げしていく方向になるとすると、現時点ではメインシナリオは(25年)1月利上げではないか」と分析した。 円安について日銀は、円安が輸入物価を上昇させ、それが一時的な要因を除いた「物価の基調」を上振れさせる場合には、利上げ判断に影響するというスタンスを取る。 植田総裁は24年12月の会見で「現状、輸入物価の対前年比で見ると、割と落ち着いている」と述べたが、木内氏は「円安の影響は統計に遅れて出てくる。これから輸入物価は上昇するだろうし、もう一度、物価を押し上げる可能性もある。植田総裁の発言は、少し不用意な感じがした」と指摘した。