まさかの初戦敗退に「夢の中なのか……」、大阪学院大高“異変”続きで力を発揮できず【24年夏・大阪大会】
<第106回全国高校野球選手権大阪大会:同志社香里 2-1 大阪学院大高>◇17日◇2回戦◇大阪シティ信用金庫スタジアム 【動画】社長と監督の“二刀流指揮官”が見据える日本一の道。大阪学院大高はなぜ大阪2強に勝てたのか 春の府大会で大阪2強の履正社と大阪桐蔭を下して優勝した大阪学院大高が同志社香里に1対2で敗れて初戦敗退。「正直、まさかです」と辻盛英一監督は驚きを隠せなかった。 走攻守の三拍子が揃ったドラフト候補の遊撃手である主将の今坂 幸暉(3年)は試合後に号泣。「あまり負けたという実感がなくて、夢のなのかなというくらい何が何だかわからないくらいの気持ちです」と現実をまだ受け止め切れていない様子だった。 全国的にも有力校の敗退が相次いでいる今年の夏。「どんなアクシデントもあると思うし、いつもないことが起きる可能性もあるけど、冷静にいこう」と今坂は試合前に仲間に呼びかけていたが、そのまさかは早くも序盤に訪れた。 1回表、大阪学院大高は二死から3番の今坂がフェンス手前まで打球を飛ばすも右飛に倒れる。アウトになりつつも今坂の実力を見せつけ、守備につこうとした矢先、プロ注目の捕手である志水 那優(3年)が手当てを受ける姿が見られた。熱中症ではなく、過度の緊張から吐き気に見舞われたという。 その後は何とか守備につき、2回表の打席では四球で出塁するも二塁まで進んだ後に再び異変を訴えて、ベンチに下がる。最後までプレーをすることはできたが、「1週間前からずっと緊張していました。気持ちの部分で弱さが出たと思います」と肩を落とした。 チーム内から絶大の信頼を誇る正捕手の異変は投手陣にも影響がなかったわけではないだろう。先発を任されたエース左腕の前川 琉人(3年)は快調な投球を続けていたが、「いつも以上に体力を消耗していた」と辻盛監督の目には映っていた。 5回表に「甘い球と抜け球が出始めた」と指揮官が思っていたところで、一死一、二塁から8番・中村 将梧(2年)に左中間を破る2点適時二塁打を打たれて先制点を許してしまう。まだ反撃のチャンスは残されているとはいえ、後手に回ったのは否めなかった。 相手投手は最速144キロ右腕の北野 勇斗(3年)。大阪学院大高は速球に強い打者がスタメンに名を連ねていたが、「真っすぐにタイミングが合っていなかった。バッターにも焦りがあったと思います」(今坂)と本来の打棒は発揮できなかった。 3回表には二死二塁と先制のチャンスを作るも今坂が申告故意四球で歩かされると、4番・中山 悠紀(3年)が三邪飛に倒れて好機を逃す。先制された直後の6回表には先頭の今坂が右前安打で出塁して盗塁で二塁まで進んだが、後続が続かなかった。 それでも8回表に見せ場を作る。先頭の今坂は空振り三振に倒れるも連打で一、三塁のチャンスを作ると、6番・清田 銀二(3年)が左中間に適時二塁打を放って、1点差に迫った。さらに一死二、三塁と一打逆転の好機は続いたが、後続が倒れて追いつくことはできなかった。 9回表も二死走者なし。「絶対にお前をホームに還してやるから、俺まで回してこい」と今坂はネクストバッターズサークルから東 隼杜(3年)に声をかけたが、打球はライナーで一塁手のミットに収まり、ゲームセット。大阪学院大高の敗退が決まり、今坂はその場にうずくまった。 「自分たちの野球ができなかったという感じでしょうか。『日本一になる』と決めてやったことによって、変なプレッシャーがかかったのも事実だと思います。『日本一になる』と決めてやらないといけないのを『日本一にならないといけない』と思ってやってしまった。『やらないといけない』というメンタルになった瞬間に守りに入ったというのはあったと思います。チャレンジャーというところから受けて立つ方に変わった感じはします。硬さというか、良い意味での粗さがなくなったというか、綺麗に野球をやろうとしてしまっていた感じはします」 辻盛監督は淡々と敗因をこう語った。追う立場から追われる立場に変わり、本来の自分たちを見失ってしまったのだろう。最後まで硬さが抜けない印象だった。 それでも春の府大会で優勝したという偉業が消えることはない。「春も優勝してくれて、本当に強いチームだったと思うので、『ありがとう』という気持ちと『勝たせてあげられなくて申し訳ない』という気持ちの両方です。今坂に関してはあいつのおかげで勝てたこともあり、今坂のおかげでチームがこんなにまとまったので、あいつにはありがとうという言葉しかないですね」と辻盛監督は今坂をはじめ、選手たちに感謝の言葉を述べていた。 試合後の取材で今坂はプロ志望届を提出することを明言。「悔しさが自分を強くしてくれると思っています。自分は高校野球だけじゃなくて、上のステップでも活躍したいと思っているので、10月のドラフト会議まではしっかり1、2年生に交じって自分も練習したいと思っています。上手くなるところはたくさんあると思うので、プロに行けるまでは基礎からもう一個レベルアップしたいと思っています」と語った。 今回の敗戦は全ての大阪学院大高関係者にとって、多くの教訓を得ることになっただろう。それぞれのステージでこの経験が活かされることを期待したい。