在職中に亡くなった本人に代わって遺族が退職金を受け取ったら、相続税の申告をしなければならないの?
死亡退職金を受け取っても、必ず申告が必要なわけではない
では、死亡退職金などのみなし相続財産を遺族が受け取ったら、相続税の申告をしなければならないのでしょうか。 それを知るためには、預金や不動産など故人名義の遺産に、死亡退職金などのみなし相続財産を含めた上で、課税される相続財産があるのかどうかを試算する必要があります。もし課税される相続財産があれば、相続税の申告が必要です。逆に、なければ必要はありません。 では、どのように試算すればいいのでしょうか。簡略化したものではありますが、課税される相続財産がどのように計算されるかを見てみましょう。 まず、死亡退職金などを含めたすべての遺産の額を集計します。そこから、そもそも相続税がかからない「非課税財産」や葬式の費用、故人が生前に作った借金などの債務等を差し引いた上、生前贈与で加算対象となる額を足します。 その上、さらに3000万円+(600万円×法定相続人の数)で算出される「基礎控除額」を差し引き、なお遺産の額がプラスであれば、その額に相続税が課せられます。一方、マイナスであれば相続税の申告は必要ありません。
(国税庁「No.4102 相続税がかかる場合」を元に筆者作成) 次の例で具体的に試算してみましょう。 (例) 亡くなった方(被相続人):夫 法定相続人:妻、子2人(計3人) 遺産総額:5000万円(内、受け取った死亡退職金2000万円) 葬式費用:300万円 債務:なし 加算される生前贈与:500万円 計算手順は次のとおりです。 1. 故人の遺産すべての総額:5000万円 2. 相続税のかからない財産、葬式費用、借金等を差し引く: 5000万円-死亡退職金1500万円(*)-葬式費用300万円=3200万円 (*)受け取った死亡退職金は2000万円ですが、相続財産から控除できるのは、500万円×相続人の数3(妻、子ども2人)=1500万円までです。 3. 加算の対象となる生前贈与の額を足す: 3200万円+加算される生前贈与500万円=3700万円 4. 基礎控除額を引く: 3700万円-(3000万円+600万円×相続人の数3人)=▲1100万円 基礎控除の額を差し引くと、結果はマイナス(=課税される遺産の額はゼロ)になるため、この例では相続税の申告も、相続税の納付も不要、ということになります。 上記は、かなり単純化した例ですが、実際は相続財産の評価方法など、複雑な論点が少なくありません。遺産の内容が複雑だったり、自信のない方は、自己判断せず、最寄りの税務署などに確認してみてください。