在職中に亡くなった本人に代わって遺族が退職金を受け取ったら、相続税の申告をしなければならないの?
退職金や退職年金は相続税がかかる財産とみなされる
それでは、これらの退職金や年金、弔慰金を遺族が受け取った場合、相続税がかかるのでしょうか? よく考えてみると、これらは亡くなった本人が受け取ったものではなく、会社の規定などにより、遺族が代わって受け取ったものです。もともと故人の名義であったり、故人が生前受け取ったりした財産を遺族に渡すものが「遺産」なのだから、代わって受け取った退職金は相続財産ではないのでは、と疑問に思うかもしれません。 しかし、前述の退職金や年金は、税法上、相続税がかかる財産とみなされます。亡くなった本人から受け継いだものではないが、実質、それと同じ効果がある、と認められる財産(=みなし相続財産)は、相続税の計算上、相続財産に含めなければならないとされているからです。 みなし相続財産には、おもなものとして、次のものがあります(※2)。 1. 死亡退職金、被相続人が保険料を負担していた生命保険契約の死亡保険金など 2. 「教育資金の一括贈与」や「結婚・子育て資金の一括贈与」に係る贈与税非課税の特例を受けた場合の管理残額 3. 被相続人から受けた生前贈与で、相続開始前一定期間内のもの 4. 被相続人の生前、相続時精算課税の適用を受けて取得した贈与財産 なお、弔慰金については、税法上取り扱いが異なります。原則として、弔慰金は相続税がかかる財産とはみなされません。 ただし、社内規定や生前の給与の額などを勘案した上で、遺族が受け取った額のうち、通常の弔慰金の額を超えた部分については退職手当の一部とみなされ、相続税の対象になることがあります(※3)。
死亡退職金には、非課税枠がある
一方、死亡退職金のすべてが相続税上の財産となるわけではありません。相続財産の中には、「非課税財産」となるものが定められており、該当すれば遺産から差し引くことができます。主に以下のものがあります。 1. 墓地、墓石、仏壇、祭具など 2. 公益目的で使われる見込みの財産 3. 相続によって取得した生命保険金で、500万円×法定相続人の数をかけた額 4. 相続によって取得したとみなされる退職手当金等のうち、500万円×法定相続人の数をかけた額 つまり、遺族が受け取った退職金のすべてに相続税がかかる財産となるわけではなく、少なくとも500万円×法定相続人の数の額までは、相続税が非課税になる、ということです。