祝30周年!『パワフルプロ野球』伝説! 開発に携わった4人が語る、人を惹きつける魅力の源とは?
■人気モード「サクセス」、そして「栄冠ナイン」 ――3作目の『パワプロ3』(96年)にはシリーズの代名詞ともいえる「サクセス」モードが導入されますが、これはどのように生まれたのでしょう? 西川 当時って、今みたいに仕様書をかっちり書いてなかったんですよね。開発者が面白いと思って、入れたかったら入れるんですよ(笑)。 僕は当時、昼休みになるたびに、テストプレイするコーナーで同じKONAMIから1994年に出た『ときめきメモリアル』(以下、『ときメモ』)をやっていたんですよ。「面白いな~、このゲーム!」なんて言っていたら、なんか後ろから異様な雰囲気を感じ取って、振り返ったら豊原さんが柱の陰からじーっと見てるの(笑)。 それから豊原さんも一緒に遊ぶようになり、だんだんと『ときメモ』をプレイする人数が増えていったんです。 豊原 そうそう、僕も距離が近くなって。 西川 それで、「『パワプロ』の中に『ときメモ』を作ったらこんなんなるで(笑)」とか言ってセリフをもじって遊んだりしていて。そんなことを言いながら、そのままノリで作っちゃったっていう。 豊原 すでに2本も作っていたので、正直、野球を作るのにちょっと飽きてきていたんでしょうね......。 西川 あと『パワプロ』を作るために、野球関係のいろんな本を読んでいたんです。その中には、肩を壊して潰れていく選手のノンフィクション小説とか、2軍でずっとくすぶったまま消えていく選手の物語とかもあって。それらが面白かったんですよね。 それって、『ときメモ』でいう「関係構築を頑張ったけど、結果的にフラれる」みたいなものかなって思って。だから当初は「プロ野球選手の脱落していく人生」を体験できるモードを作ったという感じなんです。 豊原 今みたいに青春っぽい、カラッと明るい感じじゃなかったんだよね。 池本 『パワプロ3』や『パワプロ4』(97年)あたりのエンディングは暗いですよね。 西川 「肩を壊して引退」とか、「『君はいらない』って告げられる」とかね(笑)。 池本 なんとかマウンドに立ったのはいいけど、マスコットの中に入っていただけとか......。 西川 初期のサクセスって怨念だらけだよね。 豊原 一番参考にしたのが、小林至さんの『ボクの落第野球人生』っていう本です。東京大学野球部からロッテに入団した選手で、その後ソフトバンクホークスの取締役やアドバイザーを歴任された方で、強く影響を受けました。