祝30周年!『パワフルプロ野球』伝説! 開発に携わった4人が語る、人を惹きつける魅力の源とは?
――最近アプリにもなった高校野球部の監督として甲子園を目指すモード「栄冠ナイン」はどのような経緯で誕生したのでしょうか? 池本 実は、私が「栄冠ナイン」の企画、シナリオ、調整、デザインなどを担当していました。それまではずっとサクセスを作っていたんですけど、徐々にネタ切れも起きますし、少ししんどいから違うもの作りたいなっていう思いがあったんです。 そこでヒントにしたのが、開発者同士の遊びでした。ゲームの開発末期になると、サクセスがちゃんと機能するかどうかをテストするために選手を何人か育成するんです。そして、そこで育てた選手たちでオリジナルチームをつくって、別の制作担当者のチームと試合をさせて、それを観戦するんです。 それがすごく面白くて。試合を決めるのは選手の能力の高い低いだけでない。コンピューターのレベル次第で、能力が低くてもすごく打ってくれたりする。そういったアツい展開があるんですよね。 そこで、オリジナルチーム同士で戦わせるっていうことと、選手の行動に対して違うコンピューターレベルで動かせるっていう仕様を入れ込んだ「栄冠ナイン」が誕生しました。まあ、基本的に「栄冠ナイン」は僕が遊びたくて作ったみたいなところがあるんですけどね(笑)。 ――一時期はメジャーリーグを題材にした『実況パワフルメジャーリーグ』(2006年。以下、『パワメジャ』)もありましたが、海外ではどのような反響でしたか? 池本 『パワメジャ』に関しては、海外で出る前より先に日本で1作目が出て、『パワメジャ2』が海外の1作目だったんです。国内で出したときも、海外で初めて出したときも、評判は良かったですね。 小野浦 最近は『WBSC eBASEBALL ™パワフルプロ野球』という世界向けのタイトルを出したんですけれども、それをきっかけに海外の『パワプロ』ファンにも触れる機会が多くなってまして、海外の会場とかに行くと「『パワプロス』(海外では『MLB Power Pros』というタイトル)はやっぱり野球ゲームとして最高なんだよ!」って言ってくれる根強いファンも多くいらっしゃいます。 ■『パワプロ』が野球界を盛り上げる ――今年、『パワプロ』は30周年を迎えますが、シリーズが現実の野球に与えた影響があるとしたら、どういったところだと思いますか? 池本 球種名とかには影響を与えていますよね。縦スライダーのことをVスライダーとか、昔は言ってなかったと思いますし。『パワプロ』でつけた球種名を中継で聞いたり、野球系の媒体で『パワプロ』用語を使って説明されていたりはありますね。 豊原 僕がたまに聞くのは、「『パワプロ』をやるようになって現実の野球見るようになりました」みたいな話。これはすごくうれしいですね。 小野浦 最近だと、実際のプロ野球選手も『パワプロ』の能力値を見てくださっていて、阪神の村上(頌樹)選手がコメントで「昨シーズンはすごい成績を残したんで、今年こそは『パワプロ』の能力が上がるだろう」と言っていたり。 実際に上げさせてもらったら新聞の記事にもなりました。『パワプロ』が現実のプロ野球を盛り上げる、そんな効果が与えられたらと思っています。