【超RIZIN】「朝倉未来vs.平本蓮」の5分5Rのラウンドマストをどう見るか? 物議を醸した「判定問題」から考えるJ-MMAの未来
◆「効果的な攻撃」とは何か?
今回の修斗の場合は、下記判定基準によってジャッジされている。 ◆インターナショナル修斗コミッション認定 一般社団法人日本修斗協会制定 プロフェッショナル修斗 公式ルール 第54条【採点基準】 採点は次の順で優先的に評価される。 (1)決着に至る影響を与えた攻撃。(効果のある攻撃) (2)決着に至る影響は与えられないものの積極的で明確な攻撃。(明確な攻撃) (3)対戦者の攻撃を無効にするような巧みな試合運び。(ペース支配) ここでは、最優先に評価されるのは、フィニュシュに近づく効果的な攻撃が与えられたかどうかとしている。 PANCRASEの場合も、「効果的な打撃/グラップリングを、各ラウンドにおける評価の第一優先順位とする」と明記する。 そしてその「効果的」の意味について、「試合の決着に向かって影響力を有するかインパクトを評価」とし、さらに「累積的なインパクトよりも試合の決着に向かう重いインパクトが重視される」と、重い衝撃を与える効果的な攻撃が評価されることが記されている。 ◆パンクラス オフィシャル ルール(2024年改訂版) (2) 判定基準 10ポイント・マスト・システムが採点の標準システムである。10ポイント・マスト・システムの下では、そのラウンドの勝者に10点が与えられ、敗者には9点あるいはそれ以下の点数が与えられる(まれに10-10となるイーブンのラウンドを除く)。 ①判定においては、①効果的な打撃/グラップリング(プランA)、効果的な積極性(プランB)、ファイティングエリアコントロール(プランC)の3点からなるMMA技術を評価する。プランBとプランCはプランAが同等であると評価されない限り考慮しないものとする。 ②効果的な打撃/グラップリングを、各ラウンドにおける評価の第一優先順位とする。効果的な積極性は、効果的な打撃/グラップリングが同等な場合の評価に用いられ、ファイティング・エリア・コントロールは、他の基準が同等である場合に限り考慮される。 ③効果的な打撃:試合の決着に向かって影響力を有するインパクト(impact)が評価される。打撃の数による累積的なインパクトよりも試合の決着に向かう重いインパクトが重視される。 ④効果的なグラップリング:試合の決着に向かって影響力を有するインパクトが評価される(インパクトを作り出すテイクダウン、サブミッションの仕掛け、リバーサル、有利なポジションの獲得など)。累積的なインパクトよりも試合の決着に向かう重いインパクトが重視される。例えば、トップポジションとボトムポジションの競技者間の攻防の場合、ポジションよりも、それらの行為のインパクトの大きさ/効果的な結果が重視される。 ⑤効果的な積極性(aggressiveness):試合の決着を積極的にねらうことを意味する。両競技者の効果的な打撃/グラップリングが同等であった場合に考慮される。効果的な結果やインパクトが見込めず、ただ相手を追うような行為は効果的な積極性として評価に加味されるべき ではない。 ⑥ファイティング・エリア・コントロール:どちらの競技者が試合のペース、場所、ポジションを支配していたかを判断することによって評価される。ファイティング・エリア・コントロールは、両競技者の効果的な打撃/グラップリングと効果的積極性が同等であった場合にのみ考慮される。 ◆評価の低い「コントロール」を取りにいくと判定で負ける可能性が高い この日の大会後、昨年のABC(アソシエーション・オブ・ボクシング・コミッション&コンバティブスポーツ)総会にも出席したRIZINの柏木信吾氏は、近年のMMAジャッジについて下記のような見解を投稿した。柏木氏の許可を得て、全文を紹介したい。 ◆最近のMMA解釈(柏木信吾) 「ゴールに向けた動きしてくださいねー。あなたはどうやってフィニッシュしたいのか我々にその姿勢を見せてくださいねー。えっ、ゴールする気がない? それはちょっと評価し辛いですねー」 MMAはゴール目指すスポーツ。判定狙いは求められていない流れになってきているイメージ。 ジャッジも ①効果的な打撃/グラップリング ②効果的な積極性 ③ファイティングエリアコントロール ※JMOC引用 ①の前に「フィニッシュに向けた」と考えると分かりやすく、そしてABCのジャッジは大体この①で差を見出すという共通認識があります。 即ち「コントロール」に行き着く前に結論を出せ。 この解釈で見ていると試合の経過と共にブレイクのタイミングが徐々に速くなっていくのも納得ができます。 試合中同じ態勢になった時「それさっき3分やらせたけど全然ゴールに向かわなかったよね。このポジションまたやらせてあげるけど何か違うもの見せてね」──レフェリーもゴールを目指しています。 などと偉そうに語っていますが、先日行われたBELLATORバンタム級タイトルマッチのミックスvsマゴメドフの自己採点は46-49でマゴメドフ勝利(予想)にも関わらず、結果はミックス2-1勝利で実際あまり分かっていなかった事が露呈されました。 この理論/解釈は興行主が競技の公平性と安全のために依頼する第三者機関自らが掲げている解釈です。 故に選手はその解釈を理解した上で「判定でもなんでも良いからとにかく勝つ事」をすれば良いのです。ただし1番評価の低いコントロールの分野を取りにいくと判定で負ける可能性が高いという事です(柏木)。 と、23日までに投稿。さらに24日には、これまでユニファイドルールで反則だった垂直縦ヒジの解禁や、グラウンド状態の新定義についても言及。 ◆今まで反則だった12-6エルボーが解禁。グラウンドの定義も「手と足以外の身体の部位が地面についた状態」が新定義。つまり金網際でTDD(※テイクダウンディフェンス)をしながらグラウンド状態の恩恵を受けられなくなる。「グラウンドの恩恵受けたいならしっかり身体をマットにつけてください」。11/1から導入予定(柏木)。 と、新たなルールを紹介している。 これまでユニファイドルールでは、頭が下がったときにグラウンドに手を着けることで頭部へのキックを防ぐことができたが、11月以降は、このルールの盲点を活かしたディフェンスは使えない。手足裏以外のヒジ・ヒザ、尻や背中などをマットにつけることで「グラウンド状態」とみなされて頭部へのヒザ蹴りなどをもらわずに済むが、それはこれまでの手足をマットに着けた状態よりは、リカバリーが難しくなる。トップを取った選手にとっては押さえ込んで極める・削るチャンスにもなる。