関西の高校球児が持つ「関東の人間に負けてたまるか」という執念。二人の名将が感じた“東西の文化”の違い
往々にして「高校野球は東京より大阪のほうが強い」と言われている。実際、数字でもそれは明らかだ。今回は、長らく高校野球をけん引してきた帝京高等学校硬式野球部名誉監督・前田三夫氏と日本大学第三高等学校硬式野球部前監督・小倉全由氏の二人にも意見を伺いたい。全国の多くの強豪校と対戦してきた経験を踏まえながら「なぜ大阪が強いのか」について語ってもらった。 ※本記事は『高校野球監督論』(双葉社)より抜粋、編集したものです。
春は東京勢を寄せつけなかった大阪勢
前田三夫(以下、前田):春と夏のデータを見比べても、夏は東京8勝、大阪9勝と拮抗しているが、春は東京の6勝に対して大阪が20勝と、東京勢をまったく寄せつけていないよね。
「関西の選手は東京と違う」と感じた
小倉全由(以下、小倉):しかも春については、私が関東一の監督をやっていたとき(1988年)に、2回戦で市岡と当たって勝っていますが、それ以降37年間(2024年8月現在)まったく勝っていないんですね。12連敗もしているなんて驚きました。夏は06年に早稲田実業が斎藤(佑樹)を擁して大阪桐蔭に勝って以降、16年間勝利がない。夏は大阪との対戦数が少ないとはいえ寂しい数字です。前田先生は、東京と大阪の選手の違いをどうご覧になられていますか? 前田:私が大学生の頃、全国から集まった優秀な能力を持った選手を見たときに、「関西の選手は関東、とりわけ東京とは違うな」というのを肌で感じたんですね。関西の選手は粘り強く、ちょっとやそっとではひるまない、強気な選手が多かったのに比べ、関東の選手はそうしたものが欠けているように感じました。 そこで私は帝京の監督に就任したときに、まっ先に考えたのが、「関西の学校と試合をすること」だった。東京を含めた関東の学校にはない戦い方というものを学んでそういった要素を吸収しようと思ったんです。当時の帝京はまだ弱かったけれども、PL(学園)を含めた大阪の強豪校はもちろんのこと、東洋大姫路(兵庫)などとも戦ってレベルの高い野球を経験させていきたかった。