「狂った社員」と「耐え難い社員」が職場革新を生み出す! 「伝統vs理想主義」の対立がその原動力に
「二元論」が生む社会の亀裂
米国のコメディアン、ハサン・ミンハジは先日、米国での問題として「すべてが二元論になっている」と指摘した。二元論とは、物事や現象をふたつの対立するカテゴリーや原理で説明する考え方を指し、通常は異なる性質を持つふたつの要素が対立する形で捉えられる。 【画像】「なんとぉぉぉぉ!」 これが自動車業界の「平均年収」です! グラフで見る(10枚) ミンハジ氏は、この二元論を共和党と民主党ではなく、次のように表現した。 ・狂気の人々(insane people) ・耐え難い人々(insufferable people) ミンハジ氏は、政治的なコメディーや社会問題に関する鋭い視点で広く知られており、インディア系アメリカ人として、2014年から2018年まで「デーリー・ショー・ウィズ・トレバー・ノア」でコメディー・コーナーのリポーターを務めた後、ネットフリックスのオリジナルコメディー番組「ハサン・ミンハジ:愛国者として物申す」でさらに注目を集めた。そんな彼の指摘は、職場での対立構造を考える際にも有益な示唆を提供している。 ミンハジ氏が「狂気の人々」と表現した背景には、米国第一主義など、しばしば感情的で極端な主張をする傾向がある点があるだろう。これらの人々は、伝統や保守的な価値観を強く守ろうとし、変化に対して強い抵抗を示すことが多い。この態度は、冷静な議論よりも感情的な反発を優先する傾向がある。 一方で「耐え難い人々」は、強い正義感や理想主義が時に周囲にストレスを与える。特に環境問題や人権問題において、「正しい(と考える)行動をしていない人」を激しく非難し、価値観を他人に押し付けがちで、論理的すぎたり感情的になりすぎたりすることがある。 この二元論的な枠組みを日本企業社会に当てはめると、企業が抱える課題解決や文化形成に対して有益な視点を提供することが分かる。
理想と現実の激しい衝突
「狂気の人々」とは、現状維持を強く求め、新しい取り組みに対して強く反発する人々を指す。例えば、企業内でデジタル化や働き方改革が進められるなかで、 「今のやり方で十分だ」 と主張し、変化に抵抗する中堅以上の社員が該当する。一方で、「耐え難い人々」は、強い正義感や理想に基づき、強引な主張や過剰な改革案を提案する社員を指す。例えば、若手社員が 「この方針は時代遅れだ」 として、実行可能性を無視した極端な改革案を押し通そうとすることが典型的だ。 このように両極端の特性を持つ社員が混在する組織では、対立が生じやすく、結果として生産性や協調性に悪影響を与える。しかし、この問題を放置すると、組織全体の柔軟性が失われ、競争力が低下するため、早急な対応が求められる。 「狂気の人々」が影響力を持つ組織では、現状維持が重視され、変化への抵抗が強くなる。例えば、テレワーク導入の議論で 「出社してこそ仕事」 という固定観念が根強い場合、従業員の多様なニーズを無視した制度設計が行われることがある。一方で、「耐え難い人々」の意見が過度に反映される組織では、理想論が先行し、現場の実情が軽視される危険がある。例えば、 「これからはテレワークだ」 として全社員を出社不要にしたものの、必要なリソースや計画が不十分で、結果としてコミュニケーションの減少や離職の問題が発生し、理想は実現しないというケースだ。 これらの対立が放置されると、組織内の溝が深まり、個々のパフォーマンスだけでなく、チーム全体の協力関係にも悪影響を与える可能性がある。