「狂った社員」と「耐え難い社員」が職場革新を生み出す! 「伝統vs理想主義」の対立がその原動力に
対立から生まれる活力
「狂気の人々」と「耐え難い人々」の対立は単なる“問題”ではない。その対立から生まれるエネルギーは非常に強力であり、うまく解消し、コントロールすることができれば、組織を活性化させることができる(米国のダイナミズムはその一例だ)。 まず、組織全体の柔軟性を高めるためには、両者の特性を理解し、それぞれのよさを生かせる文化を作ることが重要だ。異なる意見を持つ社員が自由に発言できる 「心理的安全性」 を確保することが必要だ。例えば、定期的にディスカッションの場を設けて、意見をいいやすい環境を作る。また、部門間の壁を取り払うために、クロスファンクショナルなプロジェクト(異なる部門や専門分野に所属する社員が集まり、共通の目標を達成するために協力して進めるプロジェクト)を活用するのも効果的だ。組織全体が共有するビジョンやミッションを再確認し、それを基に意思決定を行う仕組みを整える。 例えば、「デジタル化」という目標を掲げる企業では、それが単なる技術導入にとどまらず、組織文化の変革を目指していることを全社員が理解することが重要だ。このように価値観を明確にすることで、対立が建設的な議論に転換しやすくなる。 「狂気の人々」の保守性と「耐え難い人々」の理想主義の両方を取り入れ、バランスの取れた文化を作ることも重要だ。例えば、新しいプロジェクトチームを編成する際に、ベテラン社員と若手社員の両方を配置し、経験と革新性を融合させることができる。 ある企業では、デジタル化を進める過程で、経営陣が「耐え難い人々」に相当する気鋭の若手だけでなく、「狂気の人々」に該当する保守派の中堅社員も巻き込む施策を実施した。 具体的には、プロジェクトの初期段階で中堅社員をリーダーに任命し、その意見を尊重しながら実際の導入プロセスを進めた。また、若手社員には過剰な理想主義が実現可能性を損なわないよう、リスク管理を学ぶ研修を実施した。この結果、双方の対立は次第に和らぎ、デジタル化プロジェクトは円滑に進んだ。
議論が生む組織強化
このように考えると、企業文化を「狂気」か「耐え難さ」のどちらかに偏らせるのではなく、面倒ではあるが、両者が激しく議論し合うような建設的な対立を目指すべきではないか。 確かに「狂気の人々」と「耐え難い人々」は両立しにくい存在だ。 しかし、対立することで両者から生まれるエネルギーを昇華させることが、組織を強くするカギになるかもしれない。
曽和利光(人事コンサルタント)