魚がテーマだけに「目からウロコ」 ピッタリすぎる本の帯が話題に 平凡社に経緯を聞きました
「増補 魚で始まる世界史」という本の帯が先日、SNS上で注目を集めました。魚がテーマの本にピッタリな「目からウロコ」と書かれているのです。担当した編集者に話を聞きました。
平凡社ライブラリーの本です
文庫より少し大きめのシリーズとして古今東西の名著を刊行してきた「平凡社ライブラリー」。 今年3月に刊行されたのが「増補 魚で始まる世界史」(著者・越智敏之さん)です。 平凡社新書の「魚で始まる世界史」の章を組みなおし、タラの部分を大幅に書き直した本です。 公式ページには、こんな紹介文が書かれています。 「十八世紀の農業革命以前、西洋の食の中心は肉ではなく魚であり、中世盛期のキリスト教社会では、一年の半分を魚を食べて過ごした。その魚への巨大な需要が、はるか遠方への航海を、漁猟と保存の技術革新を、都市の興隆を、自由と独立の精神を、ヨーロッパ近代をもたらした――。魚でたどる目からウロコの世界史」 初版のみにつく帯には、棚差しした時に見える背の部分に「目からウロコ」と書かれています。 この表記がSNS上で話題となり、「こういうセンスほしい」「これは出版社の勝利」といったコメントが寄せられました。
編集長に聞きました
「今回の『目からウロコ』はふと頭に浮かんだもので、その後、他に思いつきませんでした」 そう話すのは、平凡社ライブラリー編集長の竹内涼子さんです。 最近、ダジャレのようなことがいつでもどこでも頭に浮かんでくるという竹内さん。 年をとってダジャレが多くなるのは、脳の中で言葉の蓄積や関連付けのネットワークが充実する一方、理性をつかさどる制御機能が衰えるかららしい――。 以前、テレビ番組でそんな説明を聞き、「本当なんだな」と実感しているそうです。 「若い頃は、こちらが忙しい時に隣でつまらないダジャレを言い、しかも反応を待つ同僚にイライラしたのですが、今は自分がそうなりつつあります」
本と読者をつなぐ「紐帯」
現在の平凡社ライブラリーの帯では、表側にキャッチコピーと簡単な内容を書き、背には別の短いコピーを書いているそうです。 今回話題になったのは、背に書かれた「目からウロコ」でした。 「帯文は、限られたスペース内でその本の魅力を伝えるとても大事なものです。苦労することも多いので、そこに注目していただけたことはとてもうれしいです」 ちなみに、平凡社ライブラリーで帯がつくのは初刷のみだそうです。 「初刷にしかついていなかったり、読むのに邪魔と捨てられてしまったり、いつの間にかなくなってしまったり。本の本体と違って後世に残るものではありませんが、本と読者をつなぐ『紐帯(ちゅうたい)』でもあるので、これからも注目していただければ幸いです」