認知症の人の不安に寄り添う「5つの会話術」。うなずく、相づち、オウム返し、要約…理学療法士が教える<最重要ポイント>とは
厚生労働省によると、認知症の患者は2025年に約700万人まで達するとされています。一方で「認知症の症状は、お天気と同じで晴れたり曇ったり。思うようにいかない日があれば、心が通じ合う<晴れ>の瞬間もある。周囲はそんな<晴れ>を増やす方法を知っておくことが大切だ」と理学療法士の川畑智さんは語ります。その川畑さんいわく、認知症の人とスムーズにコミュニケーションをとるには、5つのポイントがあるそうで――。 【書影】認知症の人と”うまいこと生きる”!『ボケ、のち晴れ』 * * * * * * * ◆不安に寄り添う気持ちを忘れないで 認知症の方とのコミュニケーションは、簡単ではありません。 同じことを繰り返し聞かれたり、何度言っても話を理解されなかったり、 「もう、どげんすればいいのかわかりません!」 と苦しさを打ち明けてこられるご家族の気持ちは、よくわかります。 でも、同じことを何度も聞いてしまうのは、記憶に障害が起きているためです。 話を理解できないのは、言葉に関する脳の領域が衰え、「失語」の症状が出ているためです。 そして、自分に起きている異変に気づき、失敗を繰り返す自分を、ご本人が一番情けなく、悲しく感じていることが少なくありません。 どうか、その不安に寄り添う気持ちを忘れないでください。
◆「5つの会話術」 とはいえ、ただ「寄り添う」と言っても、難しいこともありますよね。 じつは、この「寄り添う」という行為は、気持ちの問題であると同時に、ものすごく技術的な問題でもあります。 そこで、私がいつも認知症の方との会話で大切にしているのが、次の「5つの会話術」です。 【1】うなずく 【2】相づちを打つ 【3】オウム返しをする 【4】まとめる・要約する・ゆっくり打ち返す 【5】褒める 【1】うなずくと【2】相づちを打つは、セットで対応するよう習慣づけます。 認知症の方がなにかを話し出したら、正面を向いて、やや大きくうなずきながら、同時に「うんうん」と声に出して反応しましょう。 「話を聞いてもらえている」と思えれば、認知症の方もまずは安心できます。 続いて、会話の中に具体的な内容を表す単語が出てきたら、相づちに必ずその単語を交ぜ、【3】オウム返しをします。 たとえば、「寒い」という単語が出てきた場合は、「あら、寒いんですね!」と、「カーディガンを着たい」と言った場合は「なるほど、カーディガンを着たいんですね!」と、そのまま打ち返すわけです。 相手からの会話がひととおり出切ったところで、【4】内容をまとめ、要約して、ゆっくり打ち返します。 「Aさん、寒いのでカーディガンを着ましょうね」。こんな具合です。