認知症の人の不安に寄り添う「5つの会話術」。うなずく、相づち、オウム返し、要約…理学療法士が教える<最重要ポイント>とは
◆私(I)の感謝を伝えるか?あなた(YOU)を褒めるか? そして、最も重要なポイントが【5】の褒めること。 私は、認知症の人とのコミュニケーションは、「褒(ほ)ミュニケーション」と呼んでもいいと思っています。お互いがポジティブになれ、晴れ間をつくり出す重要な要素だからです。 褒めるメッセージには、大きく2つの出し方があります。 ◆私(I)が感謝する…… 「ありがとうございます」「助かりました」「私、びっくりしました」「感心しました」「楽しかったです」「勉強になりました」など、「私」が主語になって、感謝や称賛のメッセージを伝える。 ◆相手(YOU)を褒める…… 「すごいですね」「さすがですね」「えらいですね」「立派ですね」「一番ですね」……など、「相手」の能力や行動を褒める。 これらは「Iメッセージ」と「YOUメッセージ」と呼ばれているものですが、相手がどちらを好むかによってメッセージの出し方を決めることが重要です。 これはなにも、認知症に限った話ではありません。 恋愛だって、「かわいいね」と言われたときと、「君といると幸せだ」と言われたときと、どっちがうれしいかは、結局その人次第ですよね。 「この人はどっちのメッセージがハマるんだろう」と普段の会話からつかんでおけば、たくさん《あなた》を褒めてあげるべきなのか、《私》の気持ちをどんどん伝えたほうがいいのか、というふうに分かれていくわけです。 私はいつも、どんな言葉で褒められたときに、最も笑顔が大きくなるのか、声やリアクションが大きくなるかを観察し、心に響く褒め方をメモしています。
◆いい褒め方と、悪い褒め方 ところが、褒めることは案外難しいことでもあります。 ついクセになってしまい、なんでもかんでも「すごい、すごい」と褒めがちです。 服を着ることができた、トイレをうまく済ませられたというようなことをむやみに褒められると、逆に「これくらいのことを大げさに褒めるなんて、バカにしているの?」と、不快に思われることもあります。 褒めるメッセージの出し方を間違えると、「全然褒められていない」「私のことをわかってくれない」となってしまう。 言われたほうは「私は子どもじゃない!」となってしまうわけです。 想像してみてください。大の大人であるあなたが、小学生にかけるような褒め言葉を浴びせられたら、むしろ腹が立ちますよね。 私たちはつい忘れてしまいがちですが、認知症の人は、できないこと、苦手なことが増えていくだけで、豊かな感情はしっかりと保たれています。 認知症である前に「大人(ひと)」なのです。