今治タオルを見習って始めたブランディング 大阪のタオル工場6代目は販路拡大で利益体質に
事業基盤を固めてコロナを乗り切る
自社ブランドの立ち上げと販路拡大の成果について、神藤さんは「利益率が上がり、事業基盤が強くなった」と話します。 実際、2020年春の新型コロナウイルスの拡大でOEMの受注量が大きく減り、神藤タオルの売上高はピーク時の7割ほどに落ち込みました。それでも自社ブランドの3商品については、小売店やオンラインショップでの販売量があまり変わらず、利益を確保でき、コロナを乗り切ることができました。 消費者の接点拡大といえば大手ECモールでの展開もあります。しかし、「価格競争」に陥ってしまいがちのため、神藤タオルは当面、出店の予定はありません。 2024年3月期の神藤タオルの売上高は約2億円で、そのうち自社ブランドの売り上げは4分の1の約5400万円にのぼります。さらに、その中で約1900万円(送料含む)が海外での売り上げです。 「先代のころからの職人たちの発想と高い技術に基づく商品開発力こそが、神藤タオルの何よりの財産です。そしてデザイン会社や大阪商品計画などとの出会いにも恵まれ、今日の成長につながったと考えています」
かつての屋号を新ブランドに
神藤タオルでは2024年7月に「MARUSHIN by SHINTO TOWEL」という新ブランドを立ち上げました。かつての神藤タオルの屋号「マルシン」を復活させたものです。初心に立ち返って、いいタオルを作って消費者に届けることで改めて泉州タオルの普及に尽力したいという思いを込めました。 インナーパイルや2.5重ガーゼより値段は少し抑えめにしつつ、高い機能性とデザイン性は踏襲。箱入りにして贈り物として使ってもらいやすい仕様にしました。 「今後も二つの自社ブランドの展開を、事業の中心に据えて会社を成長させたいです。2ブランドを通して神藤タオルを消費者により身近に感じてもらえるようになれば、泉州タオル自体の認知拡大やブランディングにつながると考えています」
ライター・編集者 中村信義