豆乳が回復基調 消費振興へ主要メーカーはマーケティング活動を強化 日本テトラパックも本腰
豆乳(調製豆乳・無調整豆乳・豆乳飲料)が回復基調にある。 豆乳はコロナ禍となった2020年以降、低迷。20年までの約10年間は、大豆イソフラボンによる美容・健康効果などの価値浸透で伸び続けてきたが、コロナ禍で一転。健康意識が免疫などの一段高いレベルに引き上げられた模様で、豆乳ユーザーが乳酸菌飲料をはじめ他カテゴリへ広く浅く流出。取材に応じた日本テトラパックの早谷川和宏マーケティング部マーケティングマネージャーは「20年から4年間で7%のユーザーが減少した」と語る。
日本豆乳協会調べによる2023年1~12月期の豆乳類全体の生産量は前年比4.3%減の39万8485KLとなった。 植物性飲料市場の最大カテゴリである豆乳のこれ以上の落ち込みに歯止めをかけるべく、主要メーカーはマーケティング活動を強化。容器や前処理・充填設備などのソリューションを豆乳メーカーへ提供している日本テトラパックも加勢。4月から消費振興を目的としたPR活動を展開している。 同社は過去、容器のPR活動の事例はあるが、豆乳の消費振興を目的としたPR活動は初の試みとなる。 PR活動で主眼に置いたのは、豆乳の健康価値、手軽さをメディアに改めて注目してもらうこと。中でも植物性たんぱく質にフォーカスして健康価値の訴求を重要視する。 「豆乳メーカー各社さまが様々なマーケティング施策を展開される中で、日本テトラパックとしては、豆乳の一番の強みである健康価値を改めて伝えていくことが大事だと考えた」と早谷川氏は説明する。 “リセッ豆乳”をキャッチコピーに、たんぱく質が不足しがちな現代の生活者に向けて、肉や魚の動物性たんぱく質とともに植物性たんぱく質を意識してバランスよく摂取することを啓発。加えて、豆乳はいつでも手軽に摂りやすい植物性たんぱく質であることもアピール。 5月30日からSNS広告を投下。6月17日からは都内を中心とする私鉄路線で鉄道広告を掲出した。鉄道広告は“たんぱく質バランスとれていますか? 植物性も動物性もどちらも大事”の質問を投げかけ、豆乳の植物性たんぱく質の重要性への気づきを促した。 「植物性も、動物性もバランスを考えながら、豆乳を手軽に摂っていただいてたんぱく質の量を増やしていくことを呼びかけていった」と振り返る。 各社のマーケティング活動により、豆乳市場は今年第二四半期から回復基調にある。 早谷川氏は外部データを引き「豆乳市場の6月単月は、容量ベースで3年ぶりの月間前年比でプラスになった。5‐6月の豆乳購入者数も4年ぶりに増加に転じた。やっと上向いてきたと実感している」との手応えを得ながらも、「これからも継続的なメッセージの伝達が必要と思う」と語る。 日本テトラパックは、秋冬も引き続きPR活動を実施する。 9月4日、メディア向けに「豆乳摂取による体調改善調査」と題したモニター調査の結果を発表した。 同調査は、20~30代女性14人を対象に、5月から7月の間の4週間、豆乳(無調整豆乳)200mlパック2本を1日2回に分けて摂取してもらい、豆乳摂取によるたんぱく質の動植物バランス、腸内細菌叢、便通の改善効果についての調査を行った。また、豆乳摂取前と豆乳摂取後でアンケート調査を行ったところ、疲労感、体調、睡眠後の疲労回復、睡眠の状態、髪の毛・肌の状態、生理痛、生理前の症状など8項目で改善傾向がみられた。 特に疲労感、体調への不安、髪の毛の状態、肌の状態は自覚症状として改善傾向が確認されたという。 「今回はモニター調査の位置づけだが、跡見学園女子大学マネジメント学部生活環境マネジメント学科の石渡尚子先生の監修による調査なので、参考にしていただけると考えている。今後、さらに発展した試験につながる可能性がある」と期待を寄せる。 石渡氏は同社のリリースで「普段の食事に豆乳を加えていただくことで、生活習慣病の発症予防を目的とした指標である“たんぱく質摂取目標量”を約7割(10/14 人)が上回る結果となった。豆乳飲用中は食習慣としての間食が減り、便の性状や腸内細菌叢のバランスも改善された。この良い変化も相まって、疲労感や体調、肌や髪の状態等の自覚症状に対する評価が向上したと考えられる」などのコメントを寄せる。 早谷川氏は、豆乳の中でも無調整豆乳が全体を牽引していると指摘する。 「無調整豆乳も2020年から低迷していたが、今年に入り回復基調にある。各社が提案するソイラテ、豆乳鍋、豆乳デザートは無調整豆乳がベースで、豆乳の中での構成比が高まっている」との見方を示す。 豆乳以外の植物性飲料については、乳業メーカー3社の参入によりオーツミルク市場が盛り上がりつつあるとみている。 日本テトラパックとしては、日本市場にはない植物性飲料として、大豆、アーモンド、オーツ以外の植物性素材を用いたものや、これまで捨てられていた原料の一部を再度製品に活用する“アップサイクル”と呼ばれる環境重視の植物性飲料も、今後新しいコンセプトとして重要であると考えている。 ビール醸造の副産物として得られる食物廃棄物BSG(Brewer's Spent Grain)にも着目。世界ではビール製造後に毎年4000万トンの使用済み大麦を排出しており、使用済み大麦にはプロティン・食物繊維・ビタミン・ミネラルが豊富に含まれるものの、そのほとんどが廃棄されている。 日本テトラパックでは、これらを原料とした植物性飲料も紹介している。