「クイーンビートル」浸水隠し、JR九州高速船が改善報告…安全統括管理者と運航管理者を解任
JR九州の子会社「JR九州高速船」(福岡市)が、博多港―韓国・釜山港を結ぶ旅客船「クイーンビートル」(定員502人)の浸水を隠して3か月以上運航を続けていた問題で、同社は31日午前、国土交通省に改善報告書を提出した。これに合わせて、同社の安全統括管理者と運航管理者を解任したうえで、新たに選任し、国交省に届け出た。いずれも31日が国交省が示した期限だった。 【経過表】JR九州高速船の浸水隠蔽を巡る動き
国交省は9月に行政処分の安全確保命令を出し、全国初となる「安全統括管理者・運航管理者の解任命令」を発出していた。
改善報告書には「安全管理体制を見直すとともに社員全員の安全意識の醸成と安全最優先の行動の定着・浸透を図り、信頼回復に全力で取り組む」などと記した。改善措置としては「安全意識の醸成と法令順守の意識の浸透」「安全管理体制の機能強化」「報告と情報共有」「安全報告書の作成と公表」「JR九州によるガバナンス(企業統治)の強化」の5項目に取り組むとしている。
具体的には、安全運航に関する研修の実施、外部アドバイザーの配置、「安全推進部」を設置――などを盛り込んだ。
この問題を巡っては、JR九州高速船は昨年2月にも、浸水発生時に臨時検査を受けないまま運航を数日続けたとして、同6月に安全確保命令を受け、翌月に改善報告書を国交省に提出していた。だが、JR九州高速船は今年2月にもクイーンビートルの船首区画の浸水を確認したが、5月30日まで継続。必要な修理などをせず、航海日誌などに「異常なし」と虚偽記載するなどした。修理後の8月に抜き打ち監査で発覚した。
こうした経緯から、今回の報告書には親会社のガバナンス強化も盛り込んだ。報告書提出後、JR九州高速船の大羽健司社長と記者会見したJR九州の古宮洋二社長は「JR九州高速船の安全確保ができているかどうかを確認していくのがJR九州のガバナンス。それをチェックできていなかったのはJR九州としても悪かったという反省に基づいて、ガバナンス強化を盛り込んだ」と述べた。