急増する「梅毒」、産婦人科医が早期の検査・受診を勧めるワケ、手足口病や皮膚病と間違える人も?
■手足口病だと思う人も…もし皮膚病と勘違いして皮膚科を受診してしまったら?
──しこりや湿疹というと、他の病気と間違えることもありますか? 「潰瘍のようなものができるという点では、性器ヘルペスとは間違えやすいです。また、性感染症ではないですが、手足口病と間違える人もいます。大人もかかる感染症なのですが、手や足に湿疹、口の中にも口内炎のような湿疹が出て症状が似ているため、注意が必要です。ほかに、ニキビやアトピー、乾癬なども間違いやすいですね」 ――実際、皮膚病かと思って皮膚科を受診したら、梅毒だったというケースもあるそうですね。 「ありますね。単なる湿疹だと思って皮膚科に行ったものの、ちょっと怪しいから検査してみたら梅毒だったという患者さんは一定数います。でも、実は皮膚科でも基本的に治療は可能。梅毒か皮膚病か確証がないまま皮膚科に行ってしまっても、ちゃんと治療にアクセスできるのでご安心ください」 ――そうなんですね! いきなり性病科に行くのはハードルが高い人も多いと思いますし…。 「ただ、皮膚科は基本的には保険診療で、保険診療のルールに従って検査や治療を進めるという制約があるため、時間がかかります。一方、性病科の多くは自費診療。自費なのでお金はかかりますが、早ければその日のうちに血液検査の結果も出ますし、スピーディに検査、治療が進められます。なにか思い当たる節があるのであれば、最初から性病科へ行く方が早く治療できますね」 ■現代では“鼻がもげる”まで行くことはない? だが検査可能まで最低1ヵ月はかかる ――では、検査について教えてください。梅毒には潜伏期間があるとのことですが、疑わしい性交渉があった後、すぐに検査したほうがいいのでしょうか? 「淋病やクラミジアだと性交渉の翌日でも陽性になりますが、梅毒は性交渉から検査ができるようになるまで最低1ヵ月ほど時間がかかります。ただ、そうは言っても不安になる方も多いと思うので、まずは受診して相談、説明を受けたほうが良いと思います。『◯日後に来て検査をしましょう』という流れになったとしても、それだけでも意味はあると考えます」 ――梅毒は症状がわかりにくかったり、いったん症状が治まったりすることで受診が遅れることもあるようです。受診が遅すぎて手遅れになることは? 昔は「梅毒になると鼻がもげる」といった話もありますが…。 「それは第3期(感染から数年以上経過)で、ゴム腫という腫瘍が鼻にできることで鼻の骨や皮膚を破壊し、鼻が腐り落ちる現象ですね。今は知識も治療も普及しているので、日本であれば“鼻がもげる”ところまで行くことはありません。でも、梅毒は一旦症状が治まっても潜伏しているだけで、そのままでは完治はしません」