じつは、おなじ歩くのに、平地とは「正反対の歩き方」だった…知っておきたい「山の歩き方」と「疲労の種類」
登山とウォーキングの歩き方は正反対
図1 ‒ 4で見たとおり、ごくふつうの無雪期登山をした場合、上りでの運動強度は7メッツ台となり、下界の運動でいえばジョギングなみです。このような運動を何時間も続けるのですから、身体にかかる負担をできるだけ小さくする配慮が必要です。 次の囲みは、登山と平地ウォーキングの歩き方を比べたものです。意識すべきポイントはことごとく正反対になる、といってもよいほど違っています。 ウォーキングでの歩き方 速く歩く歩幅を広げて歩く一直線上を歩く意識で膝を伸ばしてかかとから着地する後ろ足で蹴り出す腕を振る上体を起こす 登山での歩き方 ゆっくり歩く歩幅をせばめて歩く二本のレールの上を歩く意識で膝は曲げたまま足裏をフラットに着地する後ろ足は蹴らない腕は振らない上体はやや前傾させる ウォーキングの場合、平地を空身で歩くので、ゆっくり歩くだけでは運動の刺激が弱く、健康 や体力づくりに対する効果も小さくなります。そこで、速く歩く、歩幅を大きくする、後ろ足を蹴り出す、腕を振るといった、運動強度を上げる工夫をするのです。いいかえると、ウォーキングは運動強度を高めるために、わざと効率の悪い歩き方をしているのです。 登山の場合はその反対です。ジョギングと同じ強度の運動を何時間も続けるのですから、身体にかかる負担をなるべく小さくし、効率よく歩くことが不可欠です。このため、ゆっくり歩く、歩幅は小さくする、後ろ足は蹴らない、腕は振らない、といった歩き方になるのです。この歩き方は、上りだけでなく、下りにも当てはまります。 登山の初心者に、自分の好きなように山を歩いてもらうと、ふだんの平地歩行と同じような歩き方やスピードで歩いて、すぐに疲労してしまう人がた くさんいます。上りや下りで疲労せずに歩く方法は、またあらためてご説明しますが、ここでは登山は平地ウォーキングとは正反対の歩き方をするもの、と覚えておいてください。