業績不振のマセラティ「売却」報道を否定 ステランティスが声明「10年の猶予」
ブランド閉鎖計画はなし
大手自動車グループのステランティスは、上半期に業績の振るわなかったマセラティの売却の可能性を否定した。 【写真】829馬力のイタリアン高級オープンカー【マセラティ・グランカブリオを写真で見る】 (20枚) 7月25日に発表された2024年上半期(1~6月)のグループ決算では、純利益が前年同期比48%減の56億ユーロ(約9020億円)となった。フリーキャッシュフローは87億ユーロ(約1兆4000億円)からわずか3億9200万ユーロ(約630億円)に減少した。 カルロス・タバレス最高経営責任者(CEO)は記者会見で「利益が出ないブランドは閉鎖する。利益の出ないブランドを持つ余裕はない」と発言。業績不振のブランドを「閉鎖」すると警告していた。 また、タバレスCEOは『ブルームバーグ・テレビジョン』に対し、「ブランドは活用するためにある。もし、それぞれの価値をマネタイズできなければ、いずれ決断が下されるだろう」と述べていた。 傘下のマセラティは8200万ユーロ(約136億円)の調整後営業損失を計上した。その結果、詳細不明だが「経営上の措置」がとられたという。 これを受け、一部のアナリストはマセラティが売却される可能性を示唆し、また欧州メディアを中心にそのような報道もなされた。 しかし7月31日、ステランティスの広報担当者はAUTOCARに対し、経営をスリム化する計画はないとして、次のように述べた。 「ステランティスは、14の象徴的なブランドからなるポートフォリオ全体に対するコミットメントを改めて表明します。それぞれのブランドには、収益性の高い持続可能ビジネスを構築するための10年の時間的猶予があり、不安定な市場や一時的な状況により変動が生じる可能性があることも認識しています」 この声明により、グループ全体の売上にわずかしか貢献していないDSやランチアの閉鎖の噂も否定された。 ステランティスは上半期の業績不振について、欧州全体の消費冷え込みと北米での落ち込み、製品ラインナップの縮小により販売台数が減少したためと説明している。また、プジョー3008や5008など、いくつかのモデルの世代交代による影響もあったという。
ウィル・リメル(執筆) 林汰久也(翻訳)