和田秀樹「ウォーキングよりもずっと効果的」…シュッとした中高年は知っている「ヨボヨボ老後」を防ぐ方法
■高カロリー食も無理に避ける必要はない しかし、同じものばかりを過剰摂取するフードファディズム(食べ物の健康への影響を過信すること)は、慢性型アレルギーを発症して身体の酸化を招くリスクがあります。 私もかつて「海藻や蕎麦がよい」と世間で言われるのを聞いて、意識してたくさん食べていたら、逆に海藻や蕎麦の慢性型アレルギーになってしまいました。食物アレルギーが人によって異なるのと同じで、体にいい食べ物も人によって異なるのです。ですから自分の体や脳が欲するサインに素直に応じて、食べたいものを食べるほうがいいのです。 一般的に体に悪いといわれるカレーや牛丼といった高カロリーの食事も、無理に避ける必要はありません。 私は、新型コロナウイルスが蔓延していた時期に3回の陽性判定を受けました。しかし、いずれも無症状でした。私は高血圧、糖尿病、心不全を抱えていて、年齢も60歳を超えています。コロナ発症リスクが最も高いとされる条件を満たしていたにもかかわらず、なぜ無症状だったのかと言えば、免疫力が高かったからでしょう。 医者の言うことを聞かないで、血圧が高くても好きなワインを飲み、おいしいものを食べていました。そんな生活こそ免疫力を高めるのだろうと、自らの体験から確信しているのです。 ■ウォーキングよりも効果的な運動 高血圧や心不全、糖尿病の人が、新型コロナの発症リスクが高いとされたのは、逆にふだんからいろいろな薬を飲み、節制していたことで、さまざまな免疫力が落ちてしまっていたからではないでしょうか。 好きなことを我慢しているせいで、さらに免疫力が落ちていたところに新型コロナに感染すればひとたまりもありません。これはがんに関しても同じことが言えるのだろうと思います。 日ごろの運動は大切ですが、激しすぎると体内に活性酸素を増やすことになり、老化の促進につながる恐れもあります。スポーツジムの利用者データを見ると、最もよく利用している層は60代で、次が70代だそうです。年齢を考えても、あまり無理をすると、かえって筋肉や腱(けん)を痛めることになりかねないでしょう。 スポーツジムに通う場合は、プールのあるところを選ぶといいでしょう。泳ぐためというよりも、水中でのウォーキングが高齢者にとって最適の運動になるからです。水中では浮力が働くので、みずからの体重による負担がかからず、膝や腰を痛めることがありません。その意味では地上でウォーキングするよりも優れた運動だといえます。 また、水中では水の冷たさが刺激となって身体が体温を維持しようとします。すると体温調節機能の衰えを防ぐことができるうえに新陳代謝もよくなります。水中にいるとそれだけでリラックスできる効果もあります。 「この年齢になってスポーツジムなんて……」などと尻込みせず、ぜひとも水の中を歩く快さを味わってください。適当なスポーツジムが近所になければ、毎日散歩をするだけでも高齢者にとっては十分な運動になります。日光を浴びながら戸外を歩けば骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の予防にもなるし、セロトニンが分泌される上に、気分が晴れて、うつ症状も避けられます。 ---------- 和田 秀樹(わだ・ひでき) 精神科医 1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、アメリカ・カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。国際医療福祉大学教授(医療福祉学研究科臨床心理学専攻)。一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。川崎幸病院精神科顧問。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。2022年総合ベストセラーに輝いた『80歳の壁』(幻冬舎新書)をはじめ、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『老いの品格』(PHP新書)、『老後は要領』(幻冬舎)、『不安に負けない気持ちの整理術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『どうせ死ぬんだから 好きなことだけやって寿命を使いきる』(SBクリエイティブ)、『60歳を過ぎたらやめるが勝ち 年をとるほどに幸せになる「しなくていい」暮らし』(主婦と生活社)など著書多数。 ----------
精神科医 和田 秀樹