大坂なおみが逆転で2年ぶり2度目全米OP制覇…コートに寝転がった優勝表現理由は「怪我したくなかったから安全に」
テニスの全米オープン、女子シングルス決勝が12日(日本時間13日)にニューヨークで行われ、世界ランキング9位の大坂なおみ(22、日清食品)は同27位のビクトリア・アザレンカ(31、ベラルーシ)を1-6、6-3、6-3で破り、2年ぶり2度目の優勝を飾った。全米オープンの2度以上の優勝は史上12人目。決勝戦で第1セットを失ってからの逆転Vは実に25年ぶりの快挙だという。4大大会では2019年の全豪オープン以来、3度目の優勝となり、李娜(中国)の2度を抜きアジア選手として最多の優勝回数となった。 大坂は第1セットをアザレンカの94パーセントの成功率を残したファーストサーブに苦しみ1-6で落とした。それでも粘り強いテニスを続け、第2セットでは、アザレンカがサーブを乱した第7ゲームをブレークすると、そこからペースを奪い、アンフォースドエラーを「5」に抑える内容で立て直して6-3でセットを取り返した。 勝負はファイナルセットへともつれこみ、大坂が第4ゲームでアザレンカのダブルフォルトのミスを見逃さずに先にブレーク。第5ゲームは0-40からの逆転でキープして4-1として流れをつかむ。第7ゲームをブレークバックされ4-3となったが、パワーでは大坂が上回っていた。第8ゲームを熱戦の末に大坂がブレークし栄冠に王手をかけた。 運命の第9ゲーム。40-30からアザレンカのボールがネットにかかった。その瞬間、大坂は、左手で目の付近をおさえた。少し涙ぐんだように見えた。大坂は、アザレンカと互いに健闘を称えあった後に、空を見上げて無観客のコートに仰向けに寝転んだ。 優勝インタビューで大坂は、アザレンカに敬意と感謝の言葉を伝えた。 「決勝で対戦するのは楽しみではなく怖い気持ちでした。ほんと強い相手した。若い頃、あなたのプレーを見ていたものです。ありがとうございました」 そして「チーム大坂」のメンバー、大会関係者、スポンサー、ファン、家族へ感謝の言葉を続けた。 「私のチームに感謝します。今年の出だしは調子がよくなかったのに私の力を信じ続けてくれました。そして、母国で見ているみんな、ほんとにありがとう。家族にも感謝します」 インタビュアーからは、なぜコートに寝転んだのか?と聞かれ「試合が終わった瞬間に崩れ落ちることってよく見ますが、私は怪我をしたくないので、安全に寝転びました」とジョークで返した。 また決勝で第1セットを落としてからの逆転優勝は25年ぶりになるが「ここは頑張り続けるしかないと思っていました」と激闘の心境を伝えた。 大坂は今大会に人種差別に抗議するため7つの黒いマスクを用意して挑んだ。決勝まで進まなければ、すべてを披露できない数である。この日は、「タミル・ライスさん」の名前の入ったマスクを着用し入場した。2014年11月にオハイオ州で白人警官によってエアガンを持っていたことで射殺された12歳の黒人少年の名前だ。インタビューでは、その一連の社会的な行動について聞かれ、「皆さんがメッセージをどんな気持ちで受け取ってくれたかに興味があります。私のマスクを見て話し合いが起きればいいですね。私はテニス業界の外のことにそれほど詳しくありませんが、いろんな人が、このことをSNSなどで話題にしてくれるとうれしいです」と答えた。 人種差別廃絶へ何かの力になれればいい…そんな社会的な使命を背負いながら戦い、勝ち抜いた。第1セットを取られても精神を乱すことなく、立ち直ったのは、そのコート外での使命感が背景にあったのかもしれない。 最後に大坂は言った。 「全力で戦い抜いたことが誇れます」 全米、全豪を連覇したときの「なおみ時代」の再到来を暗示するかのような2年ぶり2度目の全米の頂点だった。