やれることを全うするのではなく、やれることを探してやる。控えGKの献身に中村俊輔も目を細める。横浜FCの好循環。「俺も責任を持ってやる」
「ラスト15分、凄いでしょ?」
9月15日に行なわれたJ2第31節で、首位の横浜FCはホームでヴァンフォーレ甲府と対戦し、1-0の勝利を収めた。スコアレスで迎えた83分、福森晃斗の右CKをニアでカプリーニがファーに流し、ガブリエウがヘッドで叩き込む。これが決勝点に。 【画像】サポーターが創り出す圧巻の光景で選手を後押し!Jリーグコレオグラフィー特集! ゴール裏に陣取ったサポーターとともに喜び合うガブリエウ。ピッチ上の選手たちに加え、ベンチメンバーも駆けつけ、笑顔を見せて歓喜を共有する。特別なことではないかもしれないが、チームの一体感がより強く伝わる光景でもあった。 スタメンで出る選手はもちろん、控え組のモチベーションも重要なはず。横浜FCのコーチを務める中村俊輔に、ベンチの雰囲気作りで意識していることを訊けば、「でも基本は選手が作るもの。チームの雰囲気がそうするから」と、本人は特別に何かアプローチしているわけではなさそうだ。 それよりも「ベンチの選手は悔しいんじゃない」と心情を慮り、「俺も何回かサブをやったけど、途中出場って本当に難しい。身体をグッと上げなければいけない時に上がらなかったり、ゲームの流れをなかなか読めなかったり」と自身の経験を踏まえたうえで、選手たちの頑張りに感服する。 チームは今季ここまでラスト15分の得点は最大の17、失点はゼロ。俊輔は「ラスト15分、凄いでしょ? そこは選手の努力のたまもの」とし、こう続ける。 「チーム全体でやれているのもあるけど、後から入った選手たちがイメージを持ってくれている。残り15分のシチュエーションでやることはないけど、練習でそういうのを作り上げている。全員が責任を持ってやっているから。(サブ組は)悔しいと思う。たとえ不満があったとしても、それを押し殺してチームのために貢献する。それって当たり前じゃないから。本当に凄い仕事をしていると思う」 ベンチスタートで、出番のない選手もいる。たとえば、GKの永井堅梧。リーグ戦では今季まだ出場はないが、献身的にチームを盛り立てる姿に、俊輔も目を細める。 「ケンゴはチームのために、すごく声を出すしね。言われなくても、大声で鼓舞したり、そういう振る舞いができる。自分のやれることって少ないと思うんだけど、やれることを全うしているんじゃなくて、やれることを探してやっているのが、チームの強みなんじゃない? ケンゴは悔しいシーズンだと思う。試合で結果は出ていないけど、人としてすごく成長していると思う。それは今後にもつながるはず」 永井を含め、途中出場する選手たちの存在は重要だ。「だからこそ、頭から出る選手は責任を持ってやらなきゃいけないし、俺も普段から責任を持ってやる。そういうのがグルグルとつながっていくと思う」。俊輔が指摘するその循環が、首位を走る横浜FCの原動力になっているのだろう。 取材・文●広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)
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