石破総理が敗れた「外交マウント取り合戦」の内幕 “写真巧者”の習近平国家主席とは張り合ったがまさかの大遅刻で…
外交現場の“マウント&エレベーター取り合い合戦”
外交の舞台では、こうした「マウント取り合戦」がしばしば起きる。韓国が過去にG20の議長国を務めた際には、首脳たちが我先に集合写真のセンターを奪い合うことを懸念。事前に、「就任日時の古い人ほど良い位置に」「大統領か首相か外相か」など、皆が納得するルールを作って位置を整理した。それでも、良い位置に立とうとする「不心得者」が出ないよう、エスコート役をつけて、半ば強制的に決められた位置に立ってもらったという。 そのぐらい写真が重要だとわかっていながら、石破首相はAPECの集合写真に間に合わなかった。故フジモリ元大統領の墓参り後、事故渋滞に巻き込まれたというのだ。別の霞が関官僚は「予想外の交通渋滞が原因だというが、周囲の調整とサポートが甘かったのではないか」と語る。日本がホスト国になる場合、会議場外での移動については、「〇時〇分発、〇時〇分着」というように1分刻みで動線表を作る。 外務省と警察庁が協議し、交通状況とにらめっこしながら、パトカーによる先導、車線の確保などを行い、それでも時間通りに行かない可能性がある場合は通行規制に踏み込む。関係省庁の官僚の一人は「今回、石破首相の外出が突然だったとしても、事務方が計算してペルー側とちゃんと調整すべきだったのではないか」と語る。 動線の確保が必要なのは、会場の外だけではない。大規模な国際会議になると、複数の国の首脳が同じホテルに宿泊するケースも出てくる。会議場に入ったら入ったで、会議の合間に2国間会談などを行うため、やはりスムーズな移動が要求される。そこで発生するのが、エレベーターの奪い合いだ。
本当にいるエレベーター係
2023年5月に広島で開かれた主要7カ国首脳会議(広島サミット)では、主要会場にグランドプリンスホテル広島が使われた。ホテルは広島市の宇品島(うじなじま)にあるため、交通規制は容易だったが、ホテル内のエレベーターの運用が大変だった。当時、サミットの会場設営を担当した官僚によれば、ホテルの宿泊客用エレベーターは6基。マスコミ関係者は従業員用エレベーターを使うことになった。 サミット事務局で、各首脳の行動表を作り、各首脳がエレベーターを使う時間になると、担当係が控室から決められたエレベーターまでエスコートするようにした。しかし、各国首脳はなかなか時間通りに動いてくれない。会議の打ち合わせや本国との電話協議が相次ぎ、あちこちで「渋滞」が発生したという。 宿泊先のホテルも複数の首脳が同宿するケースがあった。その場合、各国の事務方がまずやる作業が「エレベーターブロック」だという。各国が専用で使えるエレベーターを1基、借り受ける作業だ。外務省の官僚は「普段、定宿にしているホテルなら、総支配人に頼めば、何とかしてくれる。でも、初めて使うホテルや、国連総会で各国首脳が大勢泊まるニューヨーク・マンハッタンの高級ホテル、ウォルドルフ・アストリアのようなケースは大変だ」と話す。