シリア政権崩壊で「鍵を握る」トルコ、強まるエルドアン氏の影響力
(ブルームバーグ): シリアの急激な政変で特に恩恵を受けている一人がトルコのエルドアン大統領だ。エルドアン氏はかつて友人だったアサド大統領の失脚により、シリアに対する影響力を著しく高め、国内外で政治的地位を強化した格好となった。
トルコの支援を受けてアサド政権打倒に成功したシリアの反体制派にとって、エルドアン氏は英雄だ。また2011年にシリア内戦が勃発した際にトルコに避難した難民の多くからもエルドアン氏は英雄視されている。
トルコ紙ミリエトは9日付で「鍵を握るのはトルコ」とし、シリアにおけるトルコの役割を称賛した。
コンサルティング会社テネオの共同社長ウォルファンゴ・ピッコリ氏は、アサド政権の崩壊に伴い、シリアにおいて「トルコは現在、最も影響力のある外国勢力として浮上している」と述べた。
今後の注目は、エルドアン氏が新たな影響力を行使して長年の政策目標を達成できるのか、そしてトランプ次期米政権が同氏を支援するのか、それとも妨げるのかだ。
トルコを後ろ盾に持つシリア反体制派は、国内でのクルド人勢力の締め出しに積極的だった。この動きは、シリアとの国境沿い大規模な緩衝地帯を設けるというトルコの長年の目標に沿ったものでもある。
しかし、これは米国からの反発に遭うリスクを伴う。
米国が支援するクルド人勢力は、シリアでの過激派組織「イスラム国」(IS)掃討で重要な役割を果たしたが、トルコはクルド人勢力をテロ組織とみなしている。クルド人の独立を求める武装組織「クルド労働者党(PKK)」と関連しているからだ。
米共和党のリンゼー・グラム上院議員はX(旧ツイッター)で「トルコはシリア北東部との間に非武装の緩衝地帯を設けて、自国の利益を守るべきではある」と投稿。「しかし、トルコがシリアのクルド人勢力に対して軍事行動を起こせば、米国の利益を著しく損なうことになる」とも述べた。
エルドアン氏の戦略に詳しいトルコの当局者によれば、トランプ氏がシリアでPKKの存在をどう扱うかは、米国・トルコ関係の方向性に大きな意味を持つ。同当局者は、慎重な扱いを要する安全保障に関する問題だとして匿名を条件に語った。