“世界一売れた”アディダスのスニーカーなのに「疲れる」「膝が痛い」納得の理由
こんにちは、シューフィッターこまつです。靴の設計、リペア、フィッティングの経験と知識を生かし、革靴からスニーカーまで、知られざる靴のイロハをみなさまにお伝えしていこうと思います。 オフィスカジュアルやビジネスカジュアルが浸透し、革靴のかわりにスニーカーを履いて仕事をする方が増えています。しかし、なぜか「革靴よりも疲れる」という悩みが多く聞かれます。サイズ選びのミスや、そもそも足にフィットしていないという問題もありますが、もっと根っこの部分で勘違いをしている方が目立ちます。 ⇒【写真】コンバースの大人気モデルも実は「歩く」用ではない 問題は、歩くためのスニーカーを履いてないことです。テニスシューズやバスケットボールシューズは、歩くための靴ではありません。ランニングシューズなどの歩行に特化したスニーカーを履かなければ、いくら適正なサイズ感であっても意味がないのです。 バスケやテニスの動きをイメージすればわかるのですが、ステップを踏んで前後左右に動くだけではなく、しっかり「止まる」ことが必要です。テニスシューズやバスケットボールシューズは、止まることに特化している靴なので、一歩一歩ブレーキをかけているようなもの。当然、歩くだけだと疲れます。そんな機能が備わった靴だとは知らずに履いている方が大半で、ショップでもいちいち教えてはくれません。
ギネス公認の世界一売れている靴はテニス用
ギネス公認で世界で一番売れたスニーカーはアディダスの「スタンスミス」です。1971年の販売以降、世界で4000万足以上が売れています。端正なシルエットから、ビジネススタイルに合わせる方も多いでしょう。しかし歩きやすさの観点から言えば「NO」です。 スタンスミスこそが「止まるため」の靴の代表格。テニスは、数十メートルも直進し続けるような動きはなく、細かい距離のダッシュ、ストップ、バックステップ。しっかり止まってラケットを振らなければ、こけてケガします。スタンスミスは実物を持ってみればわかりますが、意外に曲がりません。テニスは前傾姿勢で構えるので、つま先の高さもギリギリまで地面に近く設定され、歩くだけだとつまずきやすくなっています。歩くときは誰でも「指のつけね」で曲がるはずですが、テニスシューズは踏ん張りを効かせるために、わざとインソールもアウトソールも曲がらせないようにできています。 また、テニスは芝か土の上でプレーするので、靴にクッションは必要ありません。地面そのものが柔らかいので、板のように硬い底のほうが安定してプレーしやすいため、コンクリートの上を歩くような設定にはなっていないのです。 スタンスミスや似たスニーカーでヒザを痛める方が多いのは、「スニーカー=クッション」というわけではないからです。