揺れる高校野球 もし「甲子園開催の7イニング制」「ドーム開催の9イニング制」の二択を迫られたなら...?
甲子園での試合は前のゲームの影響を受けやすく、長引けば待たされ、急かされることも多い。だが2部に分けることで、気温が下がることはもちろん、試合時間が確定することで「いつ始まるのかわからない」といったストレスから解放されたのは、今回得られた"副産物"だったのかもしれない。 今後、2部制を継続していくかどうかは、大会日程のこともあるので議論されていくだろうが、個人的には近年のルール変更のなかでは一筋の光になるのではないかと思っている。 【7イニング制の現実味】 ただその一方で、2部制については、高野連は副次的な要素としての導入だったのではないかという疑念もある。なぜそう思うのかと言えば、大会前に突如として話題に上がった「7イニング制」を検討しているという報道である。ワーキンググループを設置したという話だが、これはかなり前向きに動いているといった話も聞く。 しかしそれと同時に、現場からは反対意見が出ている。大阪桐蔭(大阪)の西谷浩一監督をはじめ、「9イニングでお願いしたい」という声も多く聞こえてきた。 ここで気になったのは、高野連は何にプライオリティを置いているかである。 この夏は「甲子園100周年」を猛烈にアピールした姿勢から、もっとも譲れないのは甲子園での開催ではないか。とはいえ、昨今の酷暑は異常だ。高野連がさまざまな施策を講じるようになったとはいえ、この暑さではいつ死者が出てもおかしくない。 筆者は、2003年の大会から全試合を取材するようになったが、その頃と比べても暑さはまったく違う。選手、指導者、応援団、審判、大会役員の健康はもちろん、我々メディアにしても短パンで取材することも許されない環境であり、まさに毎日が戦場のような場所だ。 「甲子園でやりたい」という思いは理解できるが、だからといって「絶対に甲子園でやるべき」という発想は、今の時代にそぐわないのかもしれない。大事なことは、全国大会の開催であり、場所が甲子園であるかどうかではなく、"目指すべき場所"をつくることではないか。