第93回選抜高校野球 1回戦 神戸国際大付、延長制す サヨナラにスタンド沸く /兵庫
<センバツ2021> センバツ初日の19日、開幕試合で北海(北海道)と戦った神戸国際大付は延長戦を制し、サヨナラ勝ちした。プロ注目の左腕エースに苦戦するも土壇場に追いつき、途中出場選手の適時打で劇的な勝利をつかんだ。西川侑志主将(3年)は「応援してくれた先輩に感謝の気持ちを込めて打席に立った」と試合を振り返り、「次は初回から攻めて、最少失点に抑えたい」と意気込みを語った。【中田敦子】 先発した阪上翔也投手(3年)は初回を3奪三振と順調な滑り出しで、「国際カラー」の青いジャンパーを羽織った生徒ら約350人は大きな拍手を送った。二回表、先頭打者に中前安打を許し、四球や安打で2死満塁のピンチを迎えると、青木尚龍監督は継投を選択。楠本晴紀投手(2年)に交代した。エースの後を継いだ息子の登板に母・晶子さん(53)は「まさかマウンドに立つとは……夢を見ているみたい」。楠本投手は押し出し四球で先制点を奪われたものの、粘りの投球で試合を作った。 スタンドの応援では、吹奏楽部員らによる演奏を事前に録音した音源が使われた。部員の堀谷光里さん(16)は「本当は甲子園で演奏したかったけど、自分の音が球場に鳴り響くのはうれしい」と話し、声援を送った。 試合は北海のエース左腕・木村大成投手(3年)の直球やキレのある変化球を打ちあぐね、スコアボードに「0」が並んだ。流れが変わったのは2点を追う六回。能登原健生選手(同)が2死走者なしで左前安打を放ち、反撃の口火を切った。この冬、マンツーマンで打撃を指導した仁平直副部長(37)は「やってくれましたね。最高です」。外野に守備位置を代えた阪上選手の内野安打で2死一、三塁とした好機に西川主将が中前適時打を放ち、1点差に詰め寄った。 九回裏1死、代打の勝木力輝斗選手(3年)が起用に応えて左前安打。1死一、三塁で試みたスクイズは失敗となったが坂本陽飛選手(同)が本盗した。審判がセーフのジェスチャーをすると、野球部員46人はオレンジ色のメガホンを力いっぱいたたき、ガッツポーズを繰り返した。流れをつかんだまま迎えた延長十回裏、1死満塁で途中出場の関悠人選手(同)の中前適時打で試合を制した。 エースの後を継いだ2年生の好投、土壇場で追いつき、延長戦をサヨナラ勝ちとした初戦。勝利の校歌が流れる球場では、息をのんで試合を見守っていた保護者らが、躍動した選手たちに大きな拍手を送っていた。 ◇ ◇ 次戦は大会第6日、仙台育英(宮城)と対戦する。 ◇走攻守レベル高く 仙台育英 1905年創立の私立校で、野球部は30年創部。センバツは2年連続14回目、夏も28回出場している。最高成績は89年夏、2001年春、15年夏の準優勝。秋の東北大会はエースの伊藤、右腕・松田、左腕・古川ら140キロ超の速球を持つ複数投手の継投で制した。4試合で計37得点、11盗塁と足を絡めた組織的な攻撃も得意で、走攻守いずれもレベルが高い。主なOBに上林誠知(ソフトバンク)、郡司裕也(中日)、平沢大河(ロッテ)ら。 ……………………………………………………………………………………………………… ■熱球 ◇ブランク克服、勝利に貢献 関悠人選手(3年) 球場の大スクリーンに、殊勲者の笑顔が映し出され、一塁側アルプススタンドから歓声が上がった。 センバツ出場が決まり、背番号「8」を付けたものの、6日から始まった練習試合は不調が続いた。「打たないと甲子園で試合に出られない」と自身を追い込んだ。田中隆太部長(31)は「完璧を求めすぎる性格」と分析する。表情の暗さを心配して「野球は相手投手との対決。自分の心に閉じこもらず、戦いを楽しめばいいよ」と声をかけた。 九回裏、無死走者なしで松尾優仁選手(2年)が左前安打で出塁、代走を任されたが進塁できなかった。「次こそは」と迎えた延長十回裏、田中部長の「思いっきりいけ」との喝に深呼吸して、打席に入った。 甘い球を振り抜いてサヨナラ勝ちを演出し、「チームに貢献できたことがうれしい」と照れ笑い。田中部長は「ブランクを乗り越えるいいきっかけになった」と喜んだ。【中田敦子】 ……………………………………………………………………………………………………… 北海 0100100000=2 0000010011=3 神戸国際大付 (延長十回) 〔神戸版〕