世界中の読者やスタッフ、みんなで「ゴール」を迎えたい 『ベルセルク』監修・森恒二先生インタビュー【後編】
三浦先生自身が『ベルセルク』世界の一員になっていた?
作者の三浦建太郎先生が急性大動脈解離で亡くなり、未完になるかと思われた大人気ダークファンタジーコミック『ベルセルク』は、三浦先生の盟友である森恒二先生と、スタジオ我画のスタッフが中心となり、連載が続けられています。作品を引き継いだ者としての覚悟や思い、制作の苦労などを語っていただいたインタビュー前編に続き、ストーリーの裏側にあった逸話や、『ベルセルク』完結後の展望について、森恒二先生に聞きました。 「ベルセルク」の世界的人気を実感! こちらが フランス語版「ベルセルク42巻 タロットカード付き特装版」、 英語版「ベルセルク豪華版」と「ガッツとグリフィスのブックエンド」です。 * * * ――森恒二先生は三浦先生から最終回までのストーリーを聞いていたそうですが、連載の監修で関わるようになってから「三浦先生が考えていた仕掛けに驚かされる」といったことを、過去のインタビューで語られていました。 森 三浦君は伏線大好き男なので、今は慎重に『ベルセルク』の謎解きをしながら進めている部分もあります。ストーリーの根幹に関わる部分なので、今は具体的に言えないのですが、「前に聞いた話と違うぞ」「何でこれがここにあるんだろう」と、1年以上悩んでいた箇所もあったんです。 それで、『ベルセルク』の編集担当だった島田さんやスタジオ我画の黒崎君に相談してみて、ようやく三浦君がそのような描写にしたのか理由が分かりました。「なるほど、そういうことか」と納得したと同時に、前に聞いていた話と全然違うことになっていたので「あいつふざけんな」と思ってしまいましたね(笑)。路線変更したなら、それを言っておいてくれよ、と。 生前の三浦君は原稿を描いている最中に路線を変更したこともあって、「ヤングアニマル」を読んで驚いたこともありました。後で三浦君に聞いたら、「描いている途中で○○○○って思ってさ」と、理由を教えてくれるんです。そのときは「へえ~、変えたんだ」としか思わなかったのですが、今になってそういう路線変更が大問題になって、自分に降りかかってくるとは思わなかったですね。 ――三浦先生から聞いていたはずのストーリーが突然変わってしまうのは、よくあることだったのでしょうか? 森 三浦君も「こうする」と決めていて、僕とも毎週のように何度も話し合っているはずなのに、読んでみたら聞いていた話と違っていて、次の回を読んでみたらもっともっと変わっている……ということもありました。三浦君は「勝手にそうなってる」って言っていましたね(笑)。ものすごく不思議で、天才ならではの現象だと思います。 彼は物語に没入しすぎて、もはやガッツたちの旅に「参加している」ような状態だったんです。作者じゃなくて当事者として行動しているように描いていたように思いますね。 確かに、漫画家の間では「キャラが勝手に動きだす」というのはよく聞く話です。でも、三浦君は当事者なので、キャラクターに関する変更についても「仕方なくこうなった」って言うんですよ(笑)。それで僕に「どうやって元の予定の方に戻そうか」と相談してきたこともありました。