世界中の読者やスタッフ、みんなで「ゴール」を迎えたい 『ベルセルク』監修・森恒二先生インタビュー【後編】
当初の予定から一番変わったキャラは？
――具体的にどのキャラが大きく変わったのでしょうか。 森 シールケですね。そもそも彼女は当初の予定では登場せず、後から追加したキャラなんですよ。三浦君が20代のときに『ベルセルク』の草案ができて、28歳くらいには最終回までの流れが決まっていたものの、そのときにシールケはいませんでした。 ただ、ガッツたちと相対するグリフィスの「新生・鷹の団」があまりにも強すぎるので、ヒーラー（病気やけがを治す役割）のポジションとしてシールケを出すことにしたんです。シールケが登場してから、どんどん三浦君のお気に入りになっていったみたいです。シールケはガッツのそばでサポートして、彼を慕うポジションにもなるのですが、それは当初の予定ではファルネーゼの役割でした。ファルネーゼはどんどんガッツと距離を縮めていくはずだったんですが、それが上手くいかなかったんです。 これも、三浦君が当事者として作品世界に入り込んでいるからこそなんですが、ヒロインとして出したはずなのに「ファルネーゼとガッツの距離が全然縮まらない」と悩んでいました。「ファルネーゼが積極的にならないんだ」「ガッツと打ち解けてくれない」って悩みながら言うんです。その一方で、シールケはぐんぐんとガッツに近付いていったので、そのおかげで話もけっこう変わっていましたね。 ――キャスカの精神を復活させるときは、シールケとファルネーゼが協力してキャスカの心のなかを旅していく場面が描かれます。シールケがそこまで重要キャラになる予定でなかったということは、キャスカの復活の仕方も当初の構想から変わったのでしょうか。 森 あの場面はシールケありきでした。もともとの予定では、精神世界ではなくキャスカと具体的に交流をして、妖精島やエルフの力も借りて彼女の精神が戻ってくる、という場面になるはずでした。 それが「キャスカが見ている夢のなかを旅する」という展開に変わったのには、きっかけがあったんです。僕が今連載している『D.ダイバー』の草案を三浦君と練っていたときに、三浦君と「夢とは何だ」という話になったんです。 科学的には、ただの脳の「余熱」のような情報を整理するために見ている、というような説明があるのですが、僕が読んだスピリチュアル系の本に「人びとは大きな意識のなかでベルトのようなものでつながっていて、それが分かるひとつのきっかけが夢だ」というようなことが書かれていたんです。 三浦君のお父さんも、かつて似たようなことを言っていました。三浦君本人は当時あまりスピリチュアル系の話は好きではなかったんですが、その『D.ダイバー』の打ち合わせのときにお父さんの話を思い出したんです。「そうだ、キャスカの精神を戻すときもこの夢の話を使おう」と、言い出したんですよ。
