〈情報混乱起きた新型コロナ「レプリコンワクチン」〉非科学的なフェイク情報の原因と影響
騒動を乗り越えて
10月1日から高齢者の定期接種が始まった。筆者は国産ワクチン応援のためにレプリコンワクチンを接種しようと考えて、医療機関合計10カ所に問い合わせたところ、すべてがファイザーワクチンだけで、レプリコンワクチンを取り扱う予定はないという。その理由は尋ねなかったが、容易に想像できる。 Meiji Seikaファルマの小林大吉郎社長は、レプリコンワクチンを導入した医療機関に対して誹謗中傷や脅迫が寄せられ、ワクチンの供給に支障が出ていることを明らかにした。そして批判を繰り返す団体を名誉毀損で提訴する方針を示した。 22年11月時点で、各社のワクチンの市場占有率はファイザーが76.62%、モデルナが23.28%、武田が0.07%だった。この状況は現在も大きくは変わっていないだろう。 ファイザーとモデルナの2種類で全体の99.9%を占めるということは、この2つがブランド化していることを示す。これに加えて、ワクチン接種者の数が急速に減っている。これだけでも新たに開発された国産ワクチンの前途は厳しいところを、レプリコンワクチンはいわれのないフェイク情報のためにさらに厳しい状況に追い込まれている。 そんな中で、モデルナ社が神奈川県藤沢市にmRNAワクチンなどの製造拠点を設置して、感染症の大流行が起きた際には迅速に対応する方針を発表した。新型コロナが突然起こったように、次の感染症がいつかは必ずやってくる。 その時のために、ワクチンを迅速に開発して供給する体制が必要だが、それを海外企業に任せるのではなく、国内企業が行うべきことは新型コロナ騒動の大きな教訓である。そのためにも、無責任なフェイク情報に惑わされることなく、国産ワクチンの普及にぜひ協力していただきたい。
唐木英明