〈情報混乱起きた新型コロナ「レプリコンワクチン」〉非科学的なフェイク情報の原因と影響
レプリコンワクチンは臨床試験によりその安全性と有効性が確認され、2023年11月に国が承認した新しい新型コロナワクチンであり、24年10月から定期接種に使用されている。ところが24年8月には日本看護倫理学会がその安全性を疑問視する緊急声明を発表した。 【図表】「レプリコンワクチン」はこれまでの新型コロナワクチンと異なるのか? これを見て、「レプリコンワクチン接種者は危険な感染性毒素を呼気から排出する」などの理由で摂種者の立ち入りを禁止する美容院やヨガスタジオが現れ、複数の医療機関までがこれに同調し、SNSはレプリコンワクチンの危険を煽るフェイク情報でにぎわっている。騒動のあまりの拡大に、ワクチン販売元のMeiji Seikaファルマは緊急声明に反論するとともに、新聞各紙の全面広告でフェイク情報に惑わされないよう注意を呼びかけた。このような非科学的な騒動が起こった原因とその影響を考える。
5種類の新型コロナワクチン
最初に、現在承認されている5種類の新型コロナワクチンを比較する。ファイザーワクチンは最初に承認されたmRNAワクチンであり、最も多く使われている。2番目に承認されたのがモデルナワクチンだ。これもmRNAワクチンだが、副反応が強く、接種部位が腫れて「モデルナアーム」を引き起こすなどの理由で避ける人がいたことは記憶に新しい。 3番目の武田ワクチンはmRNAワクチンではなく、米国のバイテク企業ノババックスが開発したスパイクタンパク質であり、遺伝子組換え技術を使って作成された。4番目は国産初の第一三共のmRNAワクチンである。 mRNAワクチンは体内でスパイクタンパク質を作る。これはウイルス表面のタンパク質だが、新型コロナウイルスの場合、スパイクタンパク質が人体の細胞表面にあるACE2受容体と結合することでウイルスが細胞内に侵入して感染する。他方、免疫系はこのスパイクタンパク質に対する抗体を作り、ウイルスの細胞侵入を抑えて感染を抑え、重症化を防ぐ。 もしウイルスを接種すると抗体ができるが感染してしまう。しかしスパイクタンパク質だけを接種すると、感染は起こらずに抗体を作ることができるのだ。武田ワクチンはスパイクタンパク質だけを体内に入れて、抗体を作らせる仕組みだ。 mRNAは不安定で、すぐに分解されてしまうため、細胞内にも体内にも残らない。だからmRNAワクチンの効果は短い。この欠点を解決したのがレプリコンワクチンである。 これはmRNAワクチンに自己複製因子を付け加えたもので、体内でmRNAを複製するので、効果が持続する。といっても自己複製効果は長くは続かず、8日目がピークで、その後mRNAは減少する。