荒れる「LINEオープンチャット」…誹謗中傷してきた匿名者を法的に制裁する方法【弁護士が解説】
LINEオープンチャットで誹謗中傷の被害に遭った場合、相手が誰であるのかわからないことも少なくないでしょう。この場合は開示請求を行い、相手の身元を特定できる可能性があります。では、開示請求はどのような流れで進めればよいのでしょうか? 本記事では、オープンチャットで誹謗中傷の被害に遭った場合の開示請求について、Authense法律事務所の弁護士が詳しく解説します。 都道府県「電気代値上がり率」ランキング…家計調査「2022年12月」前年同月比較
LINEオープンチャットとは
LINEオープンチャットとは、LINEのIDを交換することなく、共通の趣味や話題を持つ人たちとグループチャットで会話することができるサービスです。 オープンチャットはLINEのアプリを使って行いますが、相手にIDは通知されません。また、ニックネームやプロフィール画像も通常のLINEで使用しているものとは異なるものを設定できるため、原則として投稿者が誰であるのかわからないことが特徴です。
誹謗中傷されたら…とり得る主な法的措置
LINEオープンチャットでは、誹謗中傷の投稿がなされることもあります。では、オープンチャットで自身や自身の運営する店舗・企業などが誹謗中傷の被害に遭った場合、どのような法的措置をとることができるのでしょうか? ここでは、誹謗中傷に対してとり得る主な法的措置を解説します。 開示請求 1つ目は、開示請求です。開示請求とは、誹謗中傷の投稿をした者が誰であるのかを特定するため、LINEヤフー株式会社や相手が接続に使ったプロバイダなどに対して一定の情報の開示を求める手続きです。 LINEオープンチャットは匿名で投稿できるため、誹謗中傷の投稿をしたユーザーが誰であるのかわからないことも少なくありません。しかし、投稿者の住所や氏名がわからなければ、投稿者に対して損害賠償請求や刑事告訴をすることは困難です。そこで、ほかの法的措置をとる準備段階として、開示請求をする必要があります。 なお、LINEヤフー株式会社などに対して投稿者の情報開示を直接求めても、開示を受けられないことが一般的です。そのため、開示請求は原則として、裁判上の手続きによって行います。LINEオープンチャットへの投稿に対して開示請求をする流れは、後ほど改めて解説します。 損害賠償請求 2つ目は、損害賠償請求です。損害賠償請求とは、相手の不法行為によって生じた損害を金銭で賠償するよう、相手に請求することです。LINEオープンチャットでの誹謗中傷によって心理的苦痛などを被った場合は、損害賠償請求ができる可能性があります。 損害賠償請求は、はじめから裁判上で行うのではなく、まずは開示請求によって判明した相手に対して弁護士が書面を送るなどして行うことが一般的です。相手が反省してこの請求に応じるケースでは、多くの場合、示談書を交わすことにより事件として終結させます。示談書には、示談金の額のほか、「以後、誹謗中傷をしない」などの条項を記載します。 一方で、相手が請求を無視したり到底納得できないほどの減額を求めたりするなど不誠実な対応をとる場合は、裁判上での請求に移行します。裁判へ移行すると、諸般の事情を考慮したうえで、裁判所が損害賠償請求の可否や賠償金の額などを決定します。 刑事告訴 3つ目は、刑事告訴です。誹謗中傷は、その内容や態様によって「名誉毀損罪」や「侮辱罪」などの罪に該当する可能性があります。 名誉毀損罪とは、「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者」が、「その事実の有無にかかわらず」問われる罪です(刑法230条)。名誉毀損罪に該当すると、3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金の対象となります。 一方、侮辱罪とは「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者」が該当する罪です(同231条)。侮辱罪の刑罰は、1年以下の懲役もしくは禁錮もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料です。 これらはいずれも「親告罪」であり、被害者からの告訴がなければ投稿者を罪に問うことはできません。そこで、投稿者の処罰を望む場合は、多くのケースで投稿者を特定したうえで刑事告訴(警察などの捜査機関に、犯罪事実を申告し犯人の処罰を求めること)を行うことになります。告訴が受理されると必要に応じて犯人が逮捕され、警察や検察での捜査がなされます。その後、刑事裁判で有罪判決が下ると、投稿者に前科がつくこととなります。