【アイビスSD回顧】サンデー系不振のジンクス打ち破ったモズメイメイ スピード一辺倒から控えて差す形で復活果たす
スピードの進化が目覚ましいなかで
新潟直線競馬ができて24年目。レコードは創設2年目カルストンライトオがマークした53.7。22年前のものだ。現代の日本競馬は馬場管理の技術向上と生産育成調教レベルの発展に支えられ、見違えるほどのスピードを誇る。芝2000mを1分55秒台、芝1200m1分5秒台で駆ける時代だ。スピードの進化こそが日本競馬の強みといえる。そう考えると、スピードの象徴たる新潟芝直線1000mのレコードが22年も破られていないのは不思議だ。もちろん、このレース2勝、どちらも53秒台で決めたカルストンライトオの豊かなスピードは決して色あせるものではない。だが、今年の決着時計は55.3。レコードが3本も出た開幕週の馬場のわりに遅い。直前に雨が降ったが、それも時計を鈍化させるほど長い時間ではなかった。 【アイビスSD2024 推奨馬】単回率111%&複勝率55%超え!3つの好データを持つ! SPAIA編集部の推奨馬を紹介(SPAIA) そもそもアイビスサマーダッシュは馬場がよくてもそう簡単に速い時計が記録されない。53秒台は2018年ダイメイプリンセスが最後。近5年では54.5、54.2、54.4、54.9、55.3と決して速くない。これは単純にレベルの問題ではなかろう。端的にいえば、直線競馬の攻略法が各騎手に染みわたったからではないか。 カルストンライトオやメジロダーリングが躍動した初期は、直線を一気に駆け抜け、しのぎ切る。そんなスピードの絶対値を比べる戦いだった。だが、スタート直後に小さなアップダウンがあり、内と外の有利不利など色々データがそろってくると、よほど突き抜けたスピードがないと押し切れない舞台だとわかってきた。以前はなかった展開が直線競馬に持ち込まれるようになり、スローの直線競馬まで出てきた。どこかでわずかであっても溜めを効かせ、最後の勝負に備える。そうなれば、1200m以上と同じく速い時計は出にくい。レコードが22年破られていない理由を考えるのも面白いものだ。
サンデーサイレンス系が初勝利
カルストンライトオのレコードラップは12.0-9.8-10.2-9.6-12.1。9秒台を2度も記録し、後続についてこさせなかった。1ハロン9秒台が出たのは12年パドトロワが勝った年にハナを切ったハクサンムーンが記録した2ハロン目9.9が最後。今年のラップタイムは11.6-10.2-10.7-11.1-11.7。最近は中間地点で少しラップを落とす形が多い。だが、逃げたマウンテンムスメが案外、踏ん張れず、後半は失速ステージ。レース後半早々で先頭を譲る形になったのも、全体時計が速くならなかった要因だろう。内枠から手早く外ラチ沿いをとる序盤は鮮やかだったが、少しそこで力を使ってしまったようだ。 勝ったモズメイメイは先頭集団の攻防をみる形で楽に追走できた。かつて重賞2勝をあげたスピードがここにきて差すという形で甦ってきた。前走北九州記念16番人気3着での激走は反転攻勢の合図だった。スピード一辺倒から控えて差す形へ。シフトチェンジに成功したスピード型が勝利したのもまた、アイビスサマーダッシュがスピードだけでは勝てないレースになったあらわれではないか。 このレースは創設からサンデーサイレンス系が未勝利だった。モズメイメイは日本競馬発展の屋台骨を支えたサンデーサイレンスの血が通じないという歴史に終止符を打った。後半にかけるサンデーの血が勝利したのも、アイビスサマーダッシュの変化を象徴している。モズメイメイ自身は若い頃に培ったスピードに奥深さが身についた。今後もスプリント戦線で面白い存在になっていくだろう。