このままでは怖いマイクロプラスチック 生活の中で対策するヒント
一方で、次のような大切な視点もありました。それは、「プラスチックを使わなくなることによる社会への影響も考えなければならない。」というものです。 これだけプラスチックが普及している現在、機能的にも経済的にも代替が効かない場合もあるでしょう。代替の可能性があるものとして、土壌中の微生物の働きにより分解する「生分解性プラスチック」の研究が進んでいますが、従来のプラスチックに比べコストが高く、特に焼却処理が定着している日本ではまだ流通のハードルは高いと言えるでしょう。また高田教授によると、仮に流通したとしても、分解までには相当の時間を要するため、分解する前に海に出てしまえばマイクロプラスチックになってしまうことに変わりないそうです。 さらに、プラスチックを使わなくなれば、プラスチック製品に関わる多くの企業の生産活動にも影響が出てきます。それを生業としている企業にとっては大変な痛手となるでしょう。私たち消費者にとっても、プラスチック製の容器や包装が身の回りからなくなれば不便さを感じるのではないでしょうか。かと言って、紙や金属など他の資源を浪費してしまい、新たな問題を生んでしまっては本末転倒です。多角的視点から、持続可能な資源の使い方を考えることも忘れてはならないと気づかされた意見でした。 世界的にも使い捨て製品の規制が進むなど、関心が高まってきているマイクロプラスチック問題。今はまだ生態系や健康への影響は明らかにはなっていないものの、将来的に起こり得る未知の脅威に備え、まずはこうした問題があるということを一人でも多くの人に知ってもらえるよう活動を続けていきたいと、高田教授は言います。私たち一人ひとりが現状を知り、どう対応していくべきなのか、考えてみてはどうでしょうか。
※【ことば】…「水産物のMSC認証・ASC認証」「パーム油製品のRSPO認証」 自然環境や資源、そこに関わる生態系や人々の暮らしなどに配慮し、持続可能な方法で生産された製品に認証を与えてラベル表示する仕組み。MSC認証は天然水産物、ASC認証は養殖水産物に与えられる。
◎日本科学未来館 科学コミュニケーター 田中 健(たなか・けん) 1979年、福岡県生まれ。専門は有機化学。廃棄物の適正処理やリサイクル推進を専門とする公務員経験を経て、2014年4月より現職。旅が好きで、年に一度は日本を飛び出さずにはいられない