ここがヘンだよ(!?)日本の住宅ローン 国際比較から見る日本特有の事情とは…メリットと注意点を専門家が解説
ちょっと変わった日本の「変動金利」が人気な理由
さて日本の住宅ローンですが、アメリカやイギリスと違い、変動金利が主流です。約7割の個人が変動金利を選び、2割が短期の固定金利、そして1割がずっと固定金利が続くプランとなっています。 日本ではなぜ、変動金利がこれほど人気なのでしょうか? その背景は2つあります。第一に、長く続いた低金利です。日本の住宅ローンにおいて、変動金利の基準となる「短期プライムレート」は ・2009年1月は1.475% ・2024年9月は1.625% と推移しています。この15年で0.15ポイント高くなったとはいえ、高い水準とは言えません。先ほどのアメリカやイギリスと比べると、金利の差は明らかでしょう。 もう一つの背景として、日本の変動金利には、欧米とは異なる特徴があります。それは、金利の支払いが大きく変わらないような仕組みがあることです。具体的には― ・金利が上がっても、5年間は返済額が増えない ・5年ごとに返済額を見直す際も、新しい返済額は以前の額の1.25倍を超えない といったルールがあるのです。つまり、変動金利でありながら、固定金利のような安定性も持ち合わせている制度だと言えます。 低金利政策と変動金利ローンのおかげで、日本ではローン返済の負担が小さく抑えられてきました。逆に、アメリカやイギリスで広く採用される固定金利は、個人が支払う利息が多くなる傾向にあります。これは、金融機関が金利変動リスクを負う代わりに、高い金利を求めるためです。
日本の住宅ローンは変動金利への備えと残債の支払いに注意
しかし、日本の変動金利ローンにもリスクは存在します。将来の金利上昇によって、利息の支払いが増える可能性があるからです。上で紹介したような利払いを抑えるルールはあるものの、繰り上げ返済や貯蓄などの対策を考えておく必要はあるでしょう。 もう一つ、日本の住宅ローンで注意すべき点は、「リコースローン」であるということです。リコースローンでは、住宅ローンが返済できなくなった際に、担保(例えば自宅や土地)を処分した後も、残った債務は返済せねばなりません。日本とは異なり、アメリカやイギリスでは「ノンリコースローン」が主流です。担保を処分しさえすれば、残りのローンは返済しなくてもよくなります。 日本の住宅ローンは、変動金利のメリットは大きい一方で、金利上昇リスクやリコースローンであることに注意すべきです。海外の住宅ローンと見比べることで、日本の特徴がはっきりと見えてきます。 ◇ ◇ ◆新居 理有(あらい・りある)龍谷大学経済学部准教授 1982年生まれ。京都大学にて博士(経済学)を修得。2011年から複数の大学に勤め、2023年から現職。主な専門分野はマクロ経済学や財政政策。大学教員として経済学の研究・教育に携わる一方で、ライターとして経済分野を中心に記事を執筆している。 ◆新居 理有(あらい・りある)龍谷大学経済学部准教授 1982年生まれ。京都大学にて博士(経済学)を修得。2011年から複数の大学に勤め、2023年から現職。主な専門分野はマクロ経済学や財政政策。大学教員として経済学の研究・教育に携わる一方で、ライターとして経済分野を中心に記事を執筆している。
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