テスラ・モデル3 詳細データテスト 静粛性と質感は向上 やはり硬めの乗り心地 使い勝手はやや後退
はじめに
未来の歴史家は、パーソナルな移動手段として、T型フォードやフォルクスワーゲン・ビートルとともに、テスラ・モデル3の名を記すだろう。 【写真】写真で見るテスラ・モデル3とライバル (16枚) このテスラのエントリーモデルが登場した2017年、すでにEVは物珍しいものではなくなっていた。BMWや日産、そしてテスラ自身が市場を築いていた。しかし、それから7年を経て、モデル3は驚くほどどこでも見かけるクルマになった。 そんなモデル3がマイナーチェンジを実施した。自動車業界の常識からすれば随分遅い手直しだが、テスラは一般的な尺度では測れないメーカーだ。しかも、そのプロダクトはほかにないほど斬新なものだった。 それでも改良を施さざるを得なくなったのは、ポールスター2やBMW i4、BYDシールなど、直接的な競合車が続々現れたから。価格改定や航続距離、スッキリしたインテリアや独自の充電網であるスーパーチャージャーといった、これまでの魅力だけでは安泰とは行かなくなってきたのだ。快適性や質感の向上など、棚上げしていた課題に取り組むときが来たとも言える。 果たして改良版モデル3は、ライバルたちを向こうに回して、今後も競い合っていけるだけの力を手に入れたのだろうか。
意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆
プロジェクト・ハイランドと銘打たれたマイナーチェンジで、外側へ回り込んでいたヘッドライトは姿を消し、切長の、ややもすれば普通のデザインになった。デポジットは受け付けているが、まだ納車されていない新型ロードスターにも似た形状だ。 バンパーも新形状で、補助灯やインテークを省いた。そのほかエクステリアでは、テールライトの形状が変わり、ガラスハウスが拡大されている。 2017年の登場時、われわれは全高の特異さを指摘したが、現在、ライバルと比べればBMW i4と同程度で、ヒョンデ・アイオニック6より低い。また、それらより全長は短く、ホイールベースは2台の中間だ。 2017年には、全数がカリフォルニアのフリーモント工場で生産されていたモデル3だが、現在は一部が上海でも製造されている。構造はほぼそのままで、スティールボディにフロントがダブルウィッシュボーン、リアが5リンクのパッシブサスペンションを搭載。ホイールベース内には、短い筒状セルで構成されたスリムなバッテリーパックが積まれる。 登場時のセルは1865と呼ばれる直径18mm・高さ65mmのニッケル・コバルト・アルミニウムバッテリーで、これはモデルSとも共通だった。現在はそれと異なるニッケル・コバルト・アルミニウムやニッケル・マンガン・コバルト、リチウム・リン酸塩鉄などが使われている。 マイナーチェンジモデルのうち、右ハンドルのエントリーグレードはリチウム・リン酸塩鉄で、実用容量は57.5kWh。今回テストする4WDのロングレンジは、75.0kWhのニッケル・マンガン・コバルトだ。急速充電は、RWDが最大170kWだが、キャパシティ制限はない。ロングレンジは250kWだが、90%までの充電が推奨されている。 RWDのモーターは244psの永久磁石同期式を採用する。4WDは、フロントに非同期モーターを採用して惰性走行も可能にした。最高出力は、498psに達すると見られる。