ヨーグルトを食べて体調が悪化…じつは「日本人」にとっては「意味がない8つの健康法」
3 牛乳って必要? 日本人の骨粗鬆症発症率は米国白人の半分
骨粗鬆症を原因とする高齢者の骨折は、長期臥床、いわゆる寝たきりを招くことから、骨を強くするためにカルシウムを十分摂取すべきと考えられています。しかし、骨粗鬆症の原因はカルシウム不足だけではありません。 じつは、骨粗鬆症は遺伝的素因が大きく、カルシウムとビタミンDの作用、女性ホルモンの作用、骨の合成、動脈硬化などに関連する数多くの遺伝子が、骨粗鬆症の発生と関連することがわかっています。これらの遺伝子に変異が起きると骨粗鬆症の発症率が上がり、最大で80%の確率で骨粗鬆症になると推定されています。 そしてカルシウムの効果についても、世の中の常識が正しいとは必ずしも言えないようです。日本人のカルシウム摂取量は米国人の約半分ですが、骨粗鬆症の発症率は米国白人のほうが2倍高いのです。手足の骨を骨折する人の割合で見ても、日本人を含むアジア人は、欧米白人の2分の1~3分の2であることが明らかになっています。 このうち、足のつけ根部分で骨が折れる大腿骨頸部骨折は、寝たきりの原因で非常に多く、骨が弱くなった高齢者が転倒することで起こります。この大腿骨頸部骨折の発生率と、カルシウムの摂取量を国・地域ごとに比較したところ、信じられないような結果が得られました。それが図2─1です。米国、ニュージーランド、スウェーデンなど、1日あたりのカルシウム摂取量が多い国ほど、大腿骨頸部骨折を起こす人の割合が高い傾向が見られます。アジア代表として入っている香港、シンガポールとくらべてください。この報告は「カルシウム・パラドックス」として世界を驚かせました。 さらに2015年には、カルシウム摂取と骨折しやすさの関連について調べた46件の研究を総合的に分析した論文が公表され、食事からのカルシウムの摂取量と骨折の発生率には関連がないと結論づけています。 欧米でおこなわれる研究は、カルシウムを乳製品もしくはサプリメントから摂取することを前提にしていますが、日本は事情が異なります。 日本人は欧米人と違って、海藻と緑黄色野菜、大豆や小魚などからカルシウムを取ってきました。また、日本で実施された大規模なコホート研究からは、大豆と大豆製品に含まれるイソフラボンという成分が、骨からのカルシウムの流出をおさえることが示されています。日本で骨粗鬆症が少ない背景には、遺伝的素因に加えて食生活の違いがあるのかもしれません。 牛乳に関しては乳糖不耐症の問題もあります。牛乳を飲むとおなかがゴロゴロする人がいますね。これは、牛乳に含まれる乳糖という成分を分解できないことで起こります。こういう人も赤ちゃんの頃は母乳を消化できていたはずですが、成長するにつれて乳糖を分解できなくなったのです。 この現象は哺乳類で広く認められます。それが不思議なことに、人間では人種差があるのです。日本人を含む大部分の黄色人種とアフリカ系、そして白人でも地中海沿岸地域の人々は7~9割が乳糖不耐症とされているのに対し、北欧や西欧出身の白人は例外で、乳糖不耐症は1割ちょっとしかいません。 牛乳を飲む習慣は欧米から日本に伝わりました。しかし、こう見てくると、日本人の体質に牛乳が合っているかは疑問です。さらに、日本人男性4万3000人を対象に実施された調査からは、乳製品の摂取量が増えるほど前立腺がんの発症率が上がるという結果が得られました。カルシウム源として牛乳にこだわる必要はなさそうです。