<紫龍―愛工大名電・’24センバツ>登龍門 名電健児は急流、激戦を登り紫龍となる 書道歴30年、ナイン鼓舞 /愛知
◇基礎習い学ぶ野球と同じ 「登龍門 名電健児は急流 激戦を登り紫龍となる」。センバツに出場する愛工大名電の倉野光生監督(65)が、大会に懸ける意気込みを揮毫(きごう)した。「紫龍」はスクールカラーでユニホームにも取り入れられている紫と今年のえとの辰(たつ)にちなみ、「センバツで勝ち上がる力強い龍になれ」との気持ちを込めた。書道歴約30年の腕前でしたためた勢いのある書に、ナインは気持ちを奮い立たせている。【黒詰拓也】 【写真で見る歓喜の瞬間】歴代のセンバツ覇者たち 倉野監督は、当時小学生だった2人の娘が書道を習い始めたのを機に、自身も筆を執るようになった。筆の使い方から習い、手本を見ながら書く「臨書」を繰り返した。少しずつ自分らしい字が表現できるようになった時、野球との共通点を見いだした。 「基礎を習って固め、上手な人から学ぶ姿勢は野球と同じ。『土台』がしっかりすることで、自分流のプレーができる」。娘たちと一緒に字が上手になりたいと通い始めた書道教室は、野球の指導方法にも思いを巡らす大切な場となった。 今年の正月。毎年えとなどを基に新年の抱負やチーム方針を記している倉野監督は「登龍門」と大書し、愛知県春日井市にある野球部合宿所の玄関に掲げた。練習始めとなった1月8日、多くの部員が力強い書に胸を打たれた。投手の古谷龍斗(2年)は「心に響いた。名電にとっては甲子園に出ることが登龍門ではない。センバツで勝ち上がらなければいけない」と気持ちを新たにしたと振り返る。 倉野監督の書は合宿所のあらゆる所に掲げられている。規則正しい生活がプレーを安定させ、チームワークも高めるとの思いから1階ロビーには「野球は生活だ 生活が野球だ」の書。捕手の板野煌太朗(2年)は「時間や約束を守り、整理整頓するなど、集団生活に欠かせないことを書から感じ取っている」と話す。体を大きくし、スタミナをつけることも大事な練習の一つ。食堂には「苦しくなってからのもう一杯」の書があり、内野手の野口朔(こよみ)(2年)は「これを毎日見てたくさん食べ、体重を入学時から8キロ増やした」と語る。 「字には気持ちを高めたり、落ち着かせたりする効果がある。選手たちが試合や練習の時に合宿所の書を思い返してくれることを期待している」と倉野監督。指揮官の思いのこもった書は選手たちのメンタルも支える。(題字は倉野光生監督)