【法律相談】「国道を走行中、並走車の飛び石で車体に傷」加害ドライバーや道路管理者に賠償を請求のために「証明すべきこと」を弁護士が解説
車が直接ぶつかって起きた事故ではなく、走行中の車が飛ばした石によって起きる事故もある。このような事故で損害を受けた場合、“石を飛ばしてきたドライバー”に賠償請求できるのだろうか。実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【質問】 二車線の国道を走行中、並走車が飛び石を飛ばしてきました。パチンという衝撃音を感じたのですが、車は無傷。これが車体に傷がつく飛び石だった場合、並走車のナンバーをメモし、後で賠償をしてもらうのは可能ですか。それとも不可抗力ということになり、自分で損害を被らなければいけないのでしょうか。 【回答】 飛び石による車の損傷について賠償を求める相手としては、その飛び石を起こした加害運転者と、道路の管理者が考えられます。 加害運転者に賠償を求めるためには【1】飛び石により、あなたの車に傷が生じたこと、【2】飛び石を発生させた事実について加害運転者に過失があったことの証明が必要となります。また、国道の管理者である国に請求するためには【1】の他、【3】国道の管理状態が悪く、国道として通常有すべき安全性に欠ける瑕疵があり、それで飛び石が発生したことの証明が必要です。 まず、【1】の点ですが飛び石による傷は珍しくないので、傷跡だけでは請求に係る事故があったことの証明にはなりません。問題にしたい傷が、請求相手が関係する飛び石によって生じたと訴えるためには、加害運転者がその場で認めた場合を除き、ドライブレコーダーによる映像等の客観的な証拠が不可欠でしょう。
次に【2】の点ですが、例えば先行トラックの積み荷の砂利が飛んできた場合、運転者は積み荷が走行中に落ちないように積載する義務に違反したことになり、過失があります。並走車両が路上の石を撥ねて飛ばした場合には難問ですが、小石が散乱している場所であれば、高速で走行すると石を撥ね飛ばすことは予見できるので、慎重な運転をせずに走行した場合などは、過失が認められると思います。 そして、【3】の点ですが、道路管理者は自動車走行に対して通常期待される安全性を維持しなければならず、安全な走行を困難にしている道路上の障害物があるときは、除去する責任が生じます。頻繁な自動車走行が予想される国道で、飛び石事故発生の原因となるような石を放置していた場合には、道路の管理に瑕疵があったと判断され、飛び石事故による損害を賠償する責任を負うことになります。 【プロフィール】 竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。 ※週刊ポスト2024年11月29日号