【NBA Rakuten解説者インタビュー】宮田知己さん「塁さんはNBAの顔を目指せる1人」
渡邊選手のいいところはやるべきことを分かっていること
――身体能力の差を理由に、日本人はNBA選手のプレイは参考にできないという声も少なくありません。 宮田さん:僕はそう思わないですね。もちろんその高く飛んでダンクしろとかそういったことは難しいですが、例えばスペーシングだったりオフボールの動き方であったり、カットするタイミングなんかは本当に学ぶところしかない。それをただ真似するのではなく、その背景にあるニュアンスや考え方とかを採り入れて、自分のレベルに当てはめていくことが大事と思っています。 漠然と試合をフルで観ていても、いい試合だったなぁみたいな感じで終わっちゃうんです。もし何かを学びたいなら、1つ決めたところを集中して観る。例えばピック&ロールの守り方で、アンダーなのかスイッチなのかをチェックしたり。そこが細かく見えてきたら、今度はオフボールの動きも見てみる。追う場所を少しずつ増やしていくと、1試合をフルで観ていても無意識のうちに視野が広くなっていきます。自分もそうしたことを繰り返していますね。 ――そんな宮田さんから見た、今季の八村選手について聞かせてください。 宮田:NBAだけの話ではないですが、選手の評価は試合ごとに変わっていくものです。だからこそ、評価が常に一定して高い選手に価値があると思っています。レブロンなんかは長年、自身の価値を落としていません。どうしても生じてしまう波をいかに小さくできるかが大切だと思います。 塁さんについては、トップになれる時もあればそうでない時もある。その波が小さくなれば、継続的に注目される選手になれると思います。塁さんには間違いなくその力はありますから。大げさに聞こえるかもしれませんが、NBAの顔を目指せる1人だと考えています。 ――一方で渡邊雄太選手はサンズで出番を得るのに苦労しました。新天地となるグリズリーズで活躍するために必要なことは何だと思いますか? 宮田:渡邊選手のいいところは、本当にやるべきことを分かっていること。3ポイントを決めてディフェンスを頑張る、チームやファンも求めていることをやるだけです。グリズリーズはサンズよりもそうした持ち味が発揮しやすいと思います。 一時はメンタルの問題と言うことを本人も語っていましたが、そうしたことをNBAで感じることができる日本人は2人しかいないんです。なのでそうしたことを悲観するのではなく、そうした経験ができているということを自信に変えてもらいたいですね。そして本人もきっとそうするんじゃないかなと思っています。 ――では最後に、今シーズンのNBAにキャッチコピーを付けるとしたら? 宮田:時代が変わっているのは絶対間違いないと思うので、「Moving forward」ですかね。多分これから先も規格外の選手は出てくるでしょうし、NBAもこれまでとは違ったリーグになっていく可能性もある。そうなれば選手もコーチもアジャストが必要ですし、ファンとしても新しい見方をするようになっていくと。そういう意味では、全員が一歩前に進む瞬間が来るのではと考えています。
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